2004 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病原性細菌P.gingivalisの細胞内局在についての研究
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04J08213
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山村 泰平 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | P. gingivalis / fimA type / invasion / Paxillin / FAK |
Research Abstract |
歯周病はきわめて長期間にわたる慢性破壊性炎症であることが知られている.本菌の細胞内への侵入により細胞内の骨格形成に関わるタンパク群を破壊することを申請者らは報告してきたが、本菌の細胞での動態については明らかにされていない. まず、I型〜V型に分類される線毛を有するP. gingivalisを用いて、ヒト咽頭上皮由来株HEp-2細胞、およびヒト口腔粘膜上皮由来細胞株KB細胞を用いて各菌株の付着・侵入率の評価を行った。その結果、II型線毛を有するP. gingivalisが有意に高い上皮細胞への付着・侵入を示した.また、各細胞の細胞骨格制御タンパク(Paxillin・FAK)の挙動についてウェスタンブロットを用いた解析を行った結果、これらタンパク群の分解は感染率100において、II型線毛株感染細胞においてのみ認められた.各I〜V型のP. gingivalisにおいてプロテアーゼの産生量に顕著な差は認められなかったことから、細胞内に侵入したP. gingivalisによって細胞骨格制御タンパク群は分解されることが示唆された. 次に、P. gingivalisの産生する主要なプロテアーゼであるrgpとkgpがこれらタンパク群の分解にどのように関与しているかを調べるために、自殺ベクターpYKP009を用いてII型株のプロテアーゼ欠失株の作製を試みたが、プロテアーゼ欠失株は得られなかった.そこで、九州大学歯学研究科・中山博士より供与されたI型線毛株の各プロテアーゼ欠失株を用いて感染率を通常の10倍に増やして上皮細胞への侵入試験を行った結果、kgp欠失株では分解が認められたが、rgp欠失株では認められなかった.このことより、細胞内に侵入したP. gingivalisの産生するrgpによって細胞骨格制御タンパクは分解されることが示唆された. 最後に、多くの病原性細菌において細胞内侵入に関わる細胞側因子として注目されているsmall GTPaseであるRhoA・Rac1・cdc42についてそれぞれ点変異を導入した変異遺伝子を挿入してドミナント・ネガティブ発現ベクターの作製を行った.これらベクターを一過性導入したそれぞれのHela細胞にI-V型のP. gingivalisの感染実験を行ったが、一過性導入の系では導入細胞の割合が低く、どの細胞においても顕著な侵入率の差は認められなかった.そこで、RhoA・Rac1・cdc42全ての阻害剤であるToxBを用いた結果、侵入率の有意な減少が認められた.このことより、small GTPaseがP. gingivalisの細胞内への侵入に関与している可能性が示唆された.
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