2004 Fiscal Year Annual Research Report
ブラジリア連邦区形成の歴史と現状にみる社会階層の分断と人種民主主義
Project/Area Number |
04J08309
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥田 若菜 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ブラジリア連邦区 / 衛星都市 / 都市貧困層 / 路上不法就労 / 不法占拠 |
Research Abstract |
4月から7月にかけて、後期に行ったフィールドワークのための文献調査などを行った。8月12日から12月18日までブラジリア連邦共和国ブラジリア連邦区に滞在し長期調査を行った。ブラジリア連邦大学社会学部のマリーザ・ベローゾ教授の指導を受け、同大学で行われた院生ゼミなどにも出席した。また人類学部グスターボ・ヒベイロ教授の指導を受けた。衛星都市の一つであるセイランジャに滞在し、中心部の路上で商売する人々のもとでフィールドワークをし、また連邦区各地で不法占拠を行う人々にインタビューを行った。 連邦区は現在28の行政地区に分かれており、それぞれの経済格差は著しい。セイランジャはその中でもとりわけ経済程度の低い地域として知られている。今回の調査では、外部からまた内部からも「貪困者の町」として認識されている地域で、合法的な職に就けない人々が社会や自己の置かれた生活環境の厳しさをどのように捉えているのかに注目した。 合法的な職に就けない人々は収入を得るために、安く仕入れた品物(衣料・装飾品・小物・CDなど)の転売をしたり、自家製品(軽食・飲料・装飾品など)の販売など路上で働く人が多い。また、居住地を所有する権利を求め、公地を不法占拠しながら貧困者の居住権を行政に訴える人々もいる。彼らは不法と合法の境界を「生存する権利」を持ち出すことで動かそうとする。「我々は正しくないけども間違ってもいない」と主張しながら、不法と合法の境界に空間をつくりだし、自らを配置している。また彼らは、「神ではなく金を信じる金持ち」と「貧しくとも神とともにいる勤勉な我々」を対比することで、自己のおかれた状況への不満を回避するとともに、「働く勇気のない貧困者」と「働くことを恐れない我々」を対比しながら、貧困層のなかで自己を優位に置いている。
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