2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J09402
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
芝田 幸一郎 山形大学, 人文学部, 特別研究員-PD (50571436)
|
Keywords | 先史 / 物質文化 / 中南米 / アンデス文明 / 形成期 / 競合 / ペルー / 神殿 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、アンデス文明形成期(2500-50 BC)における近接する諸神殿の関係を探るため、ペルー北部中央海岸地方ネペーニャ河谷下流域に位置するワカ・パルティーダ神殿遺跡にて、第二次発掘調査を実施した。 ワカ・パルティーダ遺跡は、2002年と2004年に発掘したセロ・ブランコ遺跡から2km程離れた対岸に位置する。昨年の調査では、両遺跡が同時期であることが示唆され、また、ワカ・パルティーダ遺跡にて複数の多彩色壁画・多彩色円柱、石彫などの重要な発見があった。2005年の発掘調査では、まずワカ・パルティーダ遺跡の編年を充実させ、両遺跡が同時期であることを確定することによって、両神殿の政治的・経済的関係を探るため基礎が固められた。今後のそして現在進行中の諸分析によって、関係の内容に迫る予定である。一方、さらなる多彩色壁画と、巨大な猫科動物のレリーフの発見も、今回の特筆すべき調査成果であった。特に後者は、単体の動物ないし人物を表現した粘土レリーフ(高浮き彫り)としては、現存する古代アンデス史上最大の例となり(約3×4m)、またその保存状態も比類なきほど良好であった。これらは、既に図像資料のあるセロ・ブランコ遺跡との比較分析に有用であるばかりでなく、さらには、形成期宗教イデオロギーの中心として扱われることの多かった高地のチャビン・デ・ワンタル大神殿の石彫群とも、その規模・様式・複雑さ等において比肩するものであり、チャビンの重要性を相対的に引き下げるものかもしれない。 なお、ワカ・パルティーダの調査成果は、ペルー国の最大手新聞El Comercio紙(11月13日)にて異例なほど大きく(表紙+見開き全面)とりあげられ、のちに我が国のメディアでも紹介された。また、米スタンフォード大で開かれたアンデス形成期研究の円卓会議(3月3-4日)に招聘され、ここまでの研究成果が高く評価された。
|