Research Abstract |
本研究は,環境収容力を超えた過度の放牧(過放牧)の影響で砂漠化の進行する中国内蒙古の草原において,その保全と持続的な利用を可能にする技術の構築を目的として,1997年から岐阜大学流域研科学研究センターと中国科学院植物研究所の共同研究として進められてきた。本年度は,草生産と草の栄養価の指標となる粗タンパク質(以下CP)含有率に与える放牧強度の影響の定量評価を試みた。具体的には,2004年の5,7,9月の3時期について,現地で植生調査および地上部の刈り取りを行い,Terra MODIS衛星データから得られた植生指数を用いて草量と草質の季節変化モニタリングを行った。また,放牧家畜の放牧行動およびその空間的分布パターンを明らかにするため,位置情報を取得可能なGPSと顎運動回数を測定するバイトカウンター(Bite counter)を6月から9月の放牧期間中に取り付けた。以上より取得されたデータとASTERデータから取得された標高(DEM)などの地理環境要因データからGISデータベースを構築し,草量と草質の季節変化に与える放牧強度の影響を見た。 その結果,1)一日の羊の採食行動パターンには,気温の影響が示唆された。また気温の影響の大きさは,各季節の放牧時間のが短くなるにつれて強く作用する傾向にあった。2)放牧強度が高くなるにつれて草量が減少する傾向が認められた。一方で,CP含有率は放牧強度が高いほど高い値を維持する傾向が見られた。地形要因を含めた重回帰分析の結果,草量とCP含有率の分布は,放牧強度以外にも傾斜や方位,川や畜舎からの距離といった地形要因の影響も受けることが示唆された。
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