2005 Fiscal Year Annual Research Report
1949年前後の中国メディア界の再編-自由主義から社会主義への移行-
Project/Area Number |
04J09829
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 元哉 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 中国 / 人民共和国 / メディア / 著作権 / 報道 / 民国 |
Research Abstract |
本年度も研究実施計画にしたがって、旧国民党統治地区・中共統治地区の新聞社・雑誌社・通信社・書店の変遷課程を具体的に分析し、昨年度の研究成果を補強した。この作業を通じて、メディアの変遷過程を背後で規定する国民党政権・中共政権の言論・報道の自由をめぐる論理にも考察を加え、国民党政権のそれについては、国際情勢との関連性を視野に入れつつ、国際シンポジウムにて報告をおこなった(中国同盟会成立100周年記念・孫中山逝去80周年記念国際学術シンポジウム報告「国民党的新聞自由論与民権思想-従20世紀40年代国際情勢的角度来分析」、於南京大学、2005年8月、第二回近代中国思想与制度研討会報告「1947年憲政与近現代中国」、於国父記念館、2005年10月)。これらの報告を通じて、1940年代の言論・報道統制論は、言論弾圧を意図する論理に単純に収斂されていくようなものではなく、メディアの国際市場化による自国産業保護の論理にも支えられ、そうした危機感のなかで言論・報道の自由のあり方が模索されていたことが分かった。こうした論理は、政権交替後の人民共和国にも引き継がれ、1949年以降の台湾においては『自由中国』事件の一つの伏線となっていく。(「1940年代政治史からみた『自由中国』創刊の背景」『現代台湾研究』29号、2006年予定)。 また、民国と人民共和国における統制・検閲を考える際に、著作権制度も重要な一側面をなし、それがメディアの再編過程を分析する際に、有効な視点を提供してくれることが分かった。常識的に考えた場合、著作権はあくまでも民事上の権利であり、自由や検閲とは違う次元に位置するが、民国以降の中国においては著作権制度が検閲とも一部重複していることが特徴でった。この成果は「海賊版書籍からみた近代中国の出版政策とメディア界」(『アジア研究』52-4、2006年)で公表予定である。
|