2005 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける国民国家・福祉国家と社会的権利の変容過程:女性移住者の連帯を例に
Project/Area Number |
04J09912
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
園部 裕子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 女性移住者 / 団体活動 / フランス / 仲介 / エスニシティ / ライフストーリー / ネットワーク / 西アフリカ |
Research Abstract |
前年に引き続き、社会的権利と行為論、連帯行動に関する社会学文献、資料収集を行った。またフランスの移住者政策における行政と移住者団体の連携について事例研究を行うため、パリ市を中心に約7ヶ月間の現地調査を行った。まず、市北東部の都市政策指定地域で活動する西アフリカ系女性移住者団体において、代表者の同意を元に、ボランティア相談員として参与観察を含めた実態調査を行った。調査の結果、活動の重点は、(1)代表者と参加者らによる地域ネットワークの形成、(2)一夫多妻婚世帯の住宅問題の解決をめざした、法律家団体との連携行動、(3)出身国における開発プロジェクトを行う共同運営団体の設立、の三点にあることが分かった。以上の活動の進行を把握し、地域の行為者としての編入過程について分析した。また、当該地区において、住民による自主活動を支援する諸団体、地方自治体の住民自治および都市政策担当者等に対する聞き取り調査を実施した。さらに団体活動の共時的な展開について把握するため、周辺地区で活動する他の団体関係者への聞き取り、および仲介者のライフストーリーの収集を行った。 フランスにおける女性移住者の社会的地位の改善は、仲介や団体活動による日常的な社会編入支援が定着した結果、移住者政策においても主要課題とされるようになった。だが、活動の経済的安定性を保証し仲介者の地位の社会的承認を確立するには至っていない。仲介者らは、第二世代の若者に出身文化を伝達するため出身国への研修旅行や文化交流活動を実施するとともに、人生経路を見直し、自身の「居場所」を築くため帰国も視野に入れた開発支援プロジェクトの実施へと、視野を広げつつある。これら団体関係者の出身国を現場とする新たな活動の展開について、西アフリカ、マリで実態調査を行った。 収集したライフストーリーの一部をまとめた論文を発表するとともに、参与観察データをまとめる論文を準備中である。
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Research Products
(2 results)