2006 Fiscal Year Annual Research Report
フランスにおける国民国家・福祉国家と社会的権利の変容過程:女性移住者の連帯を例に
Project/Area Number |
04J09912
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
園部 裕子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 女性仲介者 / 団体行動 / フランス / 移民 / エスニシティ / 西アフリカ / ネットワーク / 社会学 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、社会的権利と行為論、連帯行動に関する社会学文献および資料の収集を行った。また、フランスにおける福祉国家制度と社会的権利付与の原則が、移住者による団体活動や異議申し立ての影響を受けて変容を迫られている実態についての具体的事例を把握するため、フランス・パリ第7大学において平成18年5-8月および10-11月の間、計4ヶ月程度にわたる現地調査を行った。 具体的には、パリ市の都市政策地区で活動する西アフリカ系女性移住者団体について、運営者の同意をえて行ってきた参与観察を継続した。その結果1.2001年以降、外国人の入国と滞在を規定する法律が強化され、移民や外国人が住宅や社会保障にアクセスする条件も厳しくなったことから、安定した生活を確立する上で困難が生じていること、2.帰属を考慮しないフランスの普遍主義の原則にもとづく「差別」対策は、出身や肌の色による差別に対する実質的な対策を行わず、その結果、移民に対する差別を助長してきたという社会学的な議論が定着しつつあり、差別対策のための専門機関が設置されたこと、(3)仲介者は、移民住民の社会編入を日常生活において支援する役割を担っていることが明らかになった。2005年11月の若者による都市暴動は、こうした認識を緊急の政策課題として提起し、都市・統合政策の根本的な見直しを迫った。政府は団体の役割の重要性を認め、補助金の復活と仲介者の人員増を発表した。その結果、調査先団体は、自発的活動から、仲介者契約と補助金を獲得し、当該地域の移民住民の社会編入を担う行為者として、制度上も行政と連携していくことになった。団体運営の通時的な変容過程について具体例を把握したことは、本研究の成果である。そこで調査の結果をまとめ、女性移住者団体の機能の通時的変容を分析する論文を準備するとともに、移民政策の変遷と団体活動の役割についてまとめる小論を投稿した。
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Research Products
(2 results)
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[Book] フランス都市暴動
Author(s)
稲葉奈々子, 園部裕子, 鶴巻泉子, 森千香子, 樋口直人
Publisher
明石書店(仮題、近刊予定)