2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子軌道計算のための高精度溶媒効果理論の開発と応用
Project/Area Number |
04J10236
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古濱 彩子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 分子軌道法 / 溶液内反応 / 水クラスターのイオン化 / Direct ab initio分子動力学 |
Research Abstract |
分子軌道計算のための積分方程式理論を用いた溶媒効果理論の開発を行うにあたって、ダイポールポテンシャルを用いた水分子モデルを用いた積分方程式理論開発と溶媒和自由エネルギー計算プログラム開発及び分子軌道計算プログラムパッケージへの組込中である。更に、分子軌道計算を用いた既存の溶液内反応を扱う理論の特徴を把握することも重要なため、PNNL研究所のDupuis博士の研究協力を得てDirect ab initio分子動力学計算による水クラスターのイオン化過程の研究に取組んだ。電離放射線によって誘起された水溶液中の溶媒和電子やイオン化された水分子反応の一次過程のメカニズムや動力学、周囲の溶媒の効果等の特性の解明は、水溶液中の化学反応を明らかにする基礎的研究として重要である。 理論研究の最初の段階として水のクラスターのイオン化過程に関するdirect ab initio分子動力学法を用いた計算を行った。得られたトラジェクトリーの解析によりラジカルH_2O^+と水分子で形成されたクラスター(H_2O)^+_n(n=3,4,5,6)はOHラジカル、H_3O^+またはH_5O_2^+と水部分に分類することわかり、中性水分子のイオン化によってfsのオーダーでOHラジカルが生成する実験結果と矛盾無いことが分かった。また、溶液内のOHの特徴とクラスターを形成する水分子数の相関について水素-酸素間の運動量を用いた振動量子数の計算、対応する相関関数のパワースペクトルの解析も行った。今後は更に多くの水分子を含むクラスターの計算や分子力学のパラメータで定義した水分子を導入することや動的性質に注目した解析を行うことで、液体中の水分子の特性の解明を目指し、さらに溶媒を積分方程式理論で取り扱った研究を行い、計算精度や計算時間の比較を行う。
|