2004 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙相転移における磁場揺らぎの生成および大域的な宇宙構造の形成と進化の解明
Project/Area Number |
04J10625
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市来 淨與 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 磁場生成 / 宇宙線形密度揺らぎ |
Research Abstract |
上記研究課題を達成するために私たちは以下の研究を行った。 1)磁場を起源とした密度揺らぎ、ベクトル揺らぎ、宇宙論的重力波の計算 標準宇宙論では初期宇宙のインフレーションによって、スカラー型の密度揺らぎと共に、テンソル型揺らぎの重力波が生成されたと考えられている。しかしこの枠組みでは、重力波は膨張とともに伝搬して強度を落とすだけであり、実際に行われている解析でも無視されることが多い。さらにベクトル型の揺らぎに至っては、標準モデルでは生成するメカニズムが無いことと存在しても膨張とともに単調に減少することから、現在まで考慮されてこなかった。ところが宇宙初期の磁場の存在は、これを源として新しい密度揺らぎだけでなく、宇宙論的重力波、ベクトル型揺らぎを生み出す。この計算を系統的に実行できる既存のコードがないため、まずはその構築を行った。次に実際に構築したコードを用いて数値計算を実行し、この3種類の揺らぎに起因する宇宙背景輻射の角度揺らぎのスペクトルを計算し、現在の観測と比較検証を行い、磁場の強度に対する新しい制限を得た。この成果は現在学術論文として投稿中である。 2)宇宙大域的磁場の起源の解明 天文観測技術の向上により、銀河、銀河団という非常に大きな天体スケールで、磁場が普遍的に存在することが観測的に知られているが、そのような大スケールでの磁場の起源は未だ分かっておらず、宇宙の大問題として残されている。私たちは、非常に成功した理論である宇宙線形密度揺らぎの理論の摂動2次の効果で磁場が生成されることに着目した。これにより、現在観測的にも理論的にも確立している宇宙の大スケールの密度揺らぎから、大スケールの磁場の揺らぎを生成することが可能であることを示した。実際に数値的に計算を行うことにより、種磁場として十分な大きさの磁場が生成されることを明らかにした。この成果は現在学術雑誌として投稿中である。
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Research Products
(4 results)