2004 Fiscal Year Annual Research Report
不均質な天然コロイドへの重金属イオンの吸着過程の解明とそのモデル化
Project/Area Number |
04J10922
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斉藤 拓巳 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 腐植物質 / 金属水酸化物 / 重金属 / 吸着 / 熱力学モデル / 化学種分布 / 静電相互作用 / 天然コロイド |
Research Abstract |
有害な重金属イオンの移行挙動や生態圏へのリスクを考える上で,実条件でのイオンの化学種分布の評価が不可欠となる.特に,実環境では,異種の天然コロイドが共存しており,コロイド間の相互作用によって対象イオンの結合が影響を受けるために,既存の単純な熱力学モデルではその結合挙動を記述することができない.本研究では,異なる天然コロイド混合系における重金属イオンの結合挙動およびそのメカニズムをバッチ法による結合量測定や電位差滴定法によるコロイドの帯電状態の評価,そして,レーザー分光法による結合状態の決定などから解明し,コロイド間の相互作用を取り込んだ結合モデルを構築することを目的とする.天然コロイドとしては,不均質な天然高分子電解質である腐植物質と金属水酸化物を用い,金属イオンとしては,代表的な重金属である銅イオンおよび放射性廃棄物処分において重要となる3価アクチニド核種の模擬物質としてユウロピウムを使用している.現在までに,金属イオンと単一の天然コロイドから成る2相系における結合実験を異なる条件(pH,イオン強度)で行い,得られた結果に既往の熱力学モデルを適用することでパラメータの最適化を行った.使用したモデルは,一組のパラメータセットを用いて,幅広い条件での金属イオンの結合挙動を表すことが可能であった.金属イオンと腐植物質の静電相互作用に関しては,既往のモデルの物理化学的な背景やその適用限界に関する議論が十分でないことから,特に詳細に検討した.また,腐植物質と金属水酸化物が共存する3相系では,腐植物質の金属水酸化物への吸着に際して,低pHでは腐植物質からプロトンが放出され,高pHでは金属水酸化物にプロトンが取り込まれることが分かった.吸着に伴うこのようなプロトンバランスの変化はイオン強度や腐植物質吸着量に依存しており,金属イオンの結合に重要な影響を及ぼす可能性が示唆されている.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Adsorption of humic acid on goethite : Isotherms, charge adjustments, and potential profiles.2004
Author(s)
Saito, T., Koopal, L.K., van Riemsdijk, W.H., Nagasaki, S., Tanaka, S.
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Journal Title
Langmuir 20
Pages: 689-700
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