2005 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンベース量子構造におけるキャリアダイナミクスとデバイス機能化に関する研究
Project/Area Number |
04J11309
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安原 望 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | SiGe / 量子井戸 / キャリアダイナミクス / エレクトロルミネッセンス / インパクトイオン化 |
Research Abstract |
本研究ではSiGe/Si歪量子井戸特有のバンドラインアップに着目しデバイス機能化を図った。SiGe/Si歪量子井戸では、正孔が量子閉じ込めを受ける一方で伝導帯のバンドオフセットは非常に小さい(数meV)という特徴的なtype-IIバンドラインアップとなる。このため、井戸に垂直な電場を印加すると、井戸内の電子のみが容易に井戸外へ放出される。この性質を利用することにより、井戸内の電子濃度を電場によりコントロールすることができる。 本研究において、このようなSiGe/Si歪量子井戸の特徴を利用することにより、SiGe/Si歪2重量子井戸、3重量子井戸のエレクトロルミネッセンス(EL)において、2波長スイッチング動作を検証することに成功した。シリコン特有の低いインパクトイオン化閾値(約6V)特性を利用することにより、バイディレクショナルなバイアス条件下において、EL発光が支配的な井戸が切り替わった。消光比は10以上であった。2重量子井戸における2波長スイッチングでは、逆バイアス下において注入キャリア量に対する発光効率が順バイアス下に比べ悪く、かつ温度消光が強く、30K以上においては、ほとんど逆バイアスELは観測されなかった。この結果は逆バイアス下において井戸に束縛されている電子は、強い電場に曝されていることを示している。しかし、3重量子井戸における2波長スイッチングでは、逆バイアス下において注入キャリア量に対する発光効率が順バイアス下とほとんど等しく、また温度消光も弱く、100Kにおいてもスイッチング動作が確認された。中間の不活性量子井戸に生成されるキャリアが活性層にかかる電場を遮蔽していると考えられる。SiGe/Si歪量子井戸におけるEL2波長スイッチングにおいて、活性量子井戸の中間に耐熱用不活性量子井戸を挿入することが高温動作に対して効果的であると予想される結果を得た。
|