2005 Fiscal Year Annual Research Report
湿地土壌中におけるメタンの挙動と大気への放出メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
04J11631
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常田 岳志 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 湿原 / メタン / 温室効果ガス / 気泡 / 大気圧 / 噴出 |
Research Abstract |
多量の炭素が嫌気的環境におかれている自然湿地は,温室効果ガスであるメタンの重要なソースであると考えられている。そのため世界各地で湿地地表面から大気へのメタン放出速度の測定が行われている。しかし一方で,湿地の泥炭土中で生成されたメタンが大気へ放出されるプロセスには依然として不明な点が多い。前年度の研究では,これまで溶存状態で溶けていると考えられてきたメタンの大部分は,実はバブル状態で存在していることを明らかにした。この成果は本年度,European Journal of Soil Scienceに発表された。 本年度の研究では,気泡として蓄積されたメタンの挙動を解明することを目的とした。具体的には,北海道美唄湿原から直径20cm,高さ約60cmの円柱形不攪乱泥炭試料をアクリルカラムに採取し,メタン発生と大気へ放出プロセスを調べるための室内実験を行った。透明なカラム側面から泥炭土を観測したところ,地下水面直下においても気泡が生成,成長していく様子が確認された。溶解度の低いメタンの生成が気泡の発生と成長の原因であると考えられた。 地表面からのメタンフラックスを集中的に測定したところ,気泡の上昇による突発的なメタンの噴出が観測された。このようなメタンの噴出は気泡体積の増加を引き起こす大気圧の低下に伴って生じていた。この結果は,泥炭地からのメタン放出量を正確に測定するためには,気圧が低下する荒天時に測定を行う必要があることを示している。フィールド研究者は通常天気が良い時を選んで現場測定を行っていると考えられ,天候悪化局面での大きなメタンの放出はこれまで見過ごされてきた可能性が高い。気圧低下曲面をカバーするフラックス測定計画の策定が必要であることがわかった。この成果はGeophysical Research Lettersにて発表された。
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Research Products
(2 results)