2006 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄及び腸上皮相互作用による腸管上皮幹細胞システム制御機能の解析
Project/Area Number |
04J11782
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 腸管上皮細胞 / 骨髄由来細胞 / 杯細胞 / 大腸炎 / Wnt / GSK3β / ユビキチン-プロテアソーム / メモリーT細胞 |
Research Abstract |
本研究では、我々独自の知見に基き、腸上皮の分化・再生過程における骨髄細胞-腸上皮細胞相互作用を追究している。1)分泌型ヒト腸管上皮の分化におけるATOH1遺伝子制御の重要性:ヒト杯細胞が局所のバリアー機能のみならず、腸管粘膜の免疫防御機構に重要な複数の機能を有し、粘膜再生過程で骨髄由来杯細胞が増加する、という独自の知見に基き、杯細胞分化制御の分子メカニズムを追求した結果、a)ヒト大腸上皮細胞株においてATOH1タンパクの積極的な分解により転写機能を抑制する機構が存在すること、b)ATOH1タンパクの分解はGSK3β依存性にユビキチン-プロテアソーム系により遂行されること c)さらにATOH1タンパクがWntシグナル依存性にβ-カテニンタンパクと相反的に制御され、それぞれ杯細胞分化および細胞増殖と直結した分子機能の調節を受けており、Wnt-GSK3β経路が大腸上皮細胞における増殖と分化のスイッチングを行なう機能を有する事を明らかとした。以上の機構は、ヒト大腸癌組織に於いて実際に機能している事も示され、大腸炎を背景とする発癌の分子機構の解明に寄与するのみならず杯細胞分化制御による大腸炎治療における新規標的経路となり得る可能性を示した。2)大腸炎発症に於ける骨髄由来細胞の重要性:大腸炎からの回復期において、ヒト骨髄由来細胞が分泌型上皮に誘導されるという独自に知見に基き、骨髄と大腸炎の発症過程につき追求した結果、a)マウス大腸炎モデルの骨髄に腸管特異的抗原反応性メモリーT細胞が存在すること b)同細胞の移植により、ドナーマウス同様の大腸炎が惹起し得ることを明らかとした。これらの成果により、大腸炎の発症における骨髄の意義と腸杯細胞分化制御の分子メカニズムが明瞭に示され、骨髄-腸管相互作用に着目した炎症制御と粘膜再生治療法開発の基盤となる知見を示し得た。
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