2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
04J12119
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 奉子 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | サッケード / サル / 神経活動 / 脳幹 / 運動学習 / 小脳 |
Research Abstract |
運動学習のメカニズムの解明は、システム神経科学の中心課題の一つである。本研究は随意運動学習のモデルとして眼球運動の適応学習の一つであるサッケード適応を取り上げ、その神経機構の一端を明らかにすることを目的とした。先行研究により、小脳虫部皮質およびその投射を受ける室頂核がサッケード適応に重要な役割を果たすことが強く示唆されてきた。このことを裏付ける証拠として、適応の際に行動変化の時間経過に相関して室頂核のニューロン活動が変化することが明らかにされている。しかし、この小脳出力信号の変化がどのような経路で外眼筋運動ニューロンに伝達され、サッケード振幅を変化させるかはまだ解明されていない。本研究では、室頂核から投射を受けることが解剖学的に示唆されている橋網様体の抑制性バーストニューロン(Inhibitory Burst Neuron, IBN)に注目した。 IBNは同側へのサッケードに先行してバースト発火し、反対側の外転神経核ニューロンを抑制することで、同側へのサッケードを増強すると考えられている。しかし、多くのIBNは、対側へのサッケード時にも弱い活動を示すが、主動筋運動ニューロンを抑制するこの活動の意味は不明である。本研究ではこの活動が室頂核に由来する可能性を考え、IBNに伝えられた室頂核ニューロンの活動の変化が、主動筋運動ニューロン(agonist)への抑制の程度を変化させ、サッケード振幅に影響を及ぼすという作業仮説を検証した。 実験にはアイコイルを装着し、適応課題を訓練したアカゲザル2頭を用いた。単一IBNの細胞外記録を維持しながら、サッケード適応を誘発し、対側へのサッケード時のスパイク数の変化を解析した。2頭合計43IBNの連続記録に成功した。適応前の対側へのサッケードに1発以上のスパイクを示したIBNは29、残り14IBNは発火しなかった。適応にともない、29IBN中の半数にあたる14IBNのスパイク数は有意に増加し、その半数の7IBNの発火の開始時点は早まった。一方、適応前に発火しなかった14IBNは、適応後も発火を示すことはなかった。以上の結果から、一部のIBNの活動は適応に伴い変化することが示され、室頂核の活動はこれらのIBNを経由して運動ニューロンに伝えられていることが示唆された。
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