2004 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷に対する抗インターロイキン6レセプター抗体の効果に関する基礎的研究
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04J53052
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 誠司 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 脊髄損傷 / インターロイキン6 / 神経幹細胞 |
Research Abstract |
ほ乳類成体脊髄においても神経幹細胞の存在が明らかとなったが、損傷時に神経幹細胞はニューロンへは全く分化せず、全てアストロサイトへと分化しグリア瘢痕を形成していることが報告された。グリア瘢痕は軸索の伸展を阻害するCSPGを多量に発現しており、物理的にも化学的にも軸索再生に対し大きな障害と考えられている。この、神経幹細胞の限定的なアストロサイトへの分化には損傷脊髄内の微小環境変化が重要と考えられているが、なかでもIL-6シグナルは神経幹細胞に作用し、これを強力にアストロサイトへと分化誘導することがin vitroの実験で報告されており、損傷急性期にIL-6の発現が急増することが脊髄に内在する神経幹細胞の限定的なアストロサイトへの分化原因の一つではないかと我々は考えた。我々はIL-6レセプター抗体により、損傷後急性期のIL-6シグナルを阻害することで炎症反応による二次損傷を軽減させるとともに、神経幹細胞のアストロサイトへの分化を抑制しグリア瘢痕形成を軽減させ、ひいてはより良い機能回復を得られないかという目的で実験を行った。その結果、損傷直後にIL-6レセプター抗体を投与されたマウスにおいてはコントロール群に比して有意に損傷脊髄部における炎症細胞浸潤が抑制され、損傷部に形成される結合組織瘢痕領域が縮小されていた。また、グリア瘢痕形成を新生されたアストロサイトとして定量した結果、IL-6レセプター抗体投与群において有意に抑制されていた。実際に損傷後早期にIL-6レセプターの発現が蛋白レベルで過剰に上昇すること、さらには薬剤投与群の損傷脊髄内でIL-6シグナルカスケードの下流分子であるSTAT3のリン酸化が抑制された結果から、薬剤の腹腔内投与でも有用であったことをwestern blotにて確認した。さらに運動機能評価にてコントロール群に比べ有意に良好な麻痺の改善を示した。この結果から、急性期の損傷脊髄の微小環境を修飾することにより機能改善を促進することが示された。
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