2006 Fiscal Year Annual Research Report
表面反応拡散ダイナミクスの微視的機構に関する理論的研究
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04J54171
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小谷野 哲之 名古屋大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 表面 / 界面 / アンモニア / 分極効果 / 溶媒効果 / QM / MM法 / 分子動力学法 / 自由エネルギー勾配法 |
Research Abstract |
本年度は、アンモニア分子の(1)気液界面への溶解過程と(2)液相中のイオン化過程に関する研究を行った。 (1)アンモニア分子の溶解過程におけるミクロな水和機構 前年度に引き続き、熱力学的積分法を適用した気液界面系での溶質アンモニア分子に対するQM/MM-分子動力学(MD)シミュレーションの研究を行った。溶質アンモニア分子を量子力学的に取り扱うことによって、周囲の溶媒水分子の存在による分極効果を上手く取り込める。気相中、液相中でのLJパラメータに加え、溶媒密度に依存したLJパラメータによって、気液界面に対応するハイブリッドなパラメータを作成して、溶媒和自由エネルギーを再度計算した。その結果、実験値に非常に良く一致した。 (2)水溶液中アンモニアイオン化反応におけるエネルギー安定化のミクロな要因 孤立系において溶質アンモニア-水分子対はイオン解離反応の進行に伴って不安定化するが、水溶液中反応では孤立系とは大きく異なり、遷移状態を経た安定なイオン化状態が現れる。この水溶液中反応におけるエネルギー安定化のミクロな要因を明らかにした。反応座標上の遷移状態近傍の3点に対して、水溶液中と孤立系とで溶質分子対の構造最適化を行った。水溶液中の構造に対しては、溶媒の有無による影響も調査した。溶質内相互作用は、水溶液中と孤立系、どちらも反応進行に伴い単調に不安定化する。溶媒の影響を無視した場合には水溶液中の溶質構造の方がやや不安定であるが、溶媒の影響を考慮すると溶質窒素原子の孤立原子対位置の軌道重なりによる安定化のため、溶質内相互作用のエネルギープロファイルは孤立系の場合とほぼ同様となる。イオン化状態側での溶質アンモニア-水分子対の酸素原子周囲における強固な水和構造の形成と溶質の電荷分布とは相関があることから、この反応では溶質-溶媒間相互作用がエネルギー安定化に大きく寄与すると考えられる。
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Research Products
(1 results)