1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05152110
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
杉本 徹 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (90117888)
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Keywords | ヒト神経芽腫 / 細胞分化 / 分化誘導療法 |
Research Abstract |
ヒト神経芽腫(Neuroblastoma 以下NB)は、神経冠由来の悪性腫瘍で、小児固形悪性腫瘍の中で最も頻度が高い。また進行NB患児の予後は現在なお不良である。我々は、現在まで種々の分化誘導剤を用いて、NBの多分化能を検討、NBの神経細胞、Schwann細胞あるいは平滑筋細胞への分化を明らかにしてきた。 本研究は、化学療法と外科手術後の残存腫瘍の根絶を分化誘導療法で行ない、進行性 NBの予後改善をはかることを最終目的とする。このため【.encircled1.】retinoidによるNBのin vitroでの細胞分化誘導の機序を明らかにし、また【.encircled2.】ヌード・マウスを用いてin vivoでの分化誘導療法の可能性を検討した。 1.分化誘導剤の選択:NBの神経細胞への分化誘導を、種々の分化誘導剤を用いて検討した。そのうち合成 retinoid(E5166)は、in vitroでのNBの神経細胞への分化誘導能が最も強く、また副作用もretinoic acidの1/10と少なく、臨床応用が最も期待される分化誘導剤であった。このため以下の研究ではE5166を用いた。 2.ヌード・マウスでの分化誘導療法:NB細胞株KP-N-RTを20×10^6個宛ヌード・マウスに移植すると、約90日で腫瘍が触知可能となる。そこでNB移植翌日(Day 1)、腫瘍触知(Day 90)あるいは腫瘍5mm大(Day 120)の時期より、E5166を経口投与した。そしてE5166の腫瘍の増殖に及ぼす影響を経日的に観察した。 その結果NB移植翌日(Day 1)よりE5166を投与した群で有意に腫瘍増殖抑制がみられた。また腫瘍増殖抑制がみられたE5166投与ヌード・マウス群のNB移植腫瘍を用いて、形態学的変化を検討した。その結果NB細胞の神経細胞への分化と間質の増殖(Schwann細胞への分化と考えられる)が見られた。 3.retinoidによる神経細胞への分化の機序:retinoidによるNBの分化誘導の機序はよく分かっていない。そこでretinoic acid受容体alpha,betaとgammaのcDNAを用いて、NBの神経細胞への分化能とretinoic acid受容体との関係を検討した。 その結果E5166処理により、retinoic acid受容体(alphaとbeta)のmRNA発現が増加した。 4.その他のretinoidによる分化誘導:E5166以外の合成retinoid(Am80,Ch55,Am580,Re80)(東大首藤教授より供与)についても、NBの分化誘導能を検討した。その結果Am80,Ch55とRe80にNB細胞の神経細胞への分化能があることが判明した。 以上retinoidによるNB細胞の神経細胞への分化が、in vitroとin vivoで証明され、ヒトNB患児での分化誘導療法の可能性が示された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 杉本徹ら: "細胞表面膜抗原、細胞骨格蛋白とN-myc 癌遺伝子による小児固形悪性腫瘍の診断と問題点" Human Cell. 5(1). 1-11 (1992)
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[Publications] 杉本徹ら: "ヒト神経芽腫:KP-N-RT" 生体の科学. 43(5). 509 (1992)
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[Publications] 杉本徹ら: "ヒト神経芽腫:KP-N-SI" 生体の科学. 43(5). 510 (1992)
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[Publications] Y.Katakoka,T.Matsumura,S.Yamamoto,T. Sugimoto,T.Sawada: "Distinct cytotoxicity against neuroblastoma cells of peripheral blood and tumor-infiltrating lymphocytes from patients with neuroblastoma" Cancer Letters. 73(1). 11-21 (1993)
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[Publications] A.Shikata,T.Sugimoto,H.Hosoi,Y.Sotozono,T.Shikata,T.Sawada,L.F.Parada: "Increased expression of trk proto-oncogene by gamma-interferon in human neuroblastoma cell lines" Jpn J Cancer Res. 85(2). 122-126 (1994)
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[Publications] T.Sugimoto,Y.Horii,T.Sawada,S.Fushiki,Y.Suzuki,O.Tagaya: "Vitamins and Biofactors in Life Science,Special Issue,J Nutritional Science and Vitaminology" Neuronal differentition of human neuroblastoma cells by retinoid,488-491 (1992)
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[Publications] T.Sawada,T.Shikata,T.Matsumura,H.Kawakatsu,T.Sugimoto: "Recent Ady in Neuroblastoma Res" Analysis of 598 cases of neuroblastoma detected by screening and changes in the age distribution and incidence of neuroblastoma patients after mass screening in infants in Japan In press, (1994)