1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05208101
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松村 良之 北海道大学, 法学部, 教授 (80091502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 勝造 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 助教授 (40152136)
松浦 好治 大阪大学, 法学部, 教授 (40104830)
森際 康友 名古屋大学, 法学部, 教授 (40107488)
西脇 予作 慶応義塾大学, 文学部, 教授 (30118989)
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Keywords | 人工知能 / エキスパートシステム / 認知科学 / 統一動産売買法 / 機能主義 / 表象説 / 自然主義 / 知識 |
Research Abstract |
法哲学班は、第1に重点研究の対象としている統一動産売買法(条約)について、信義誠実条項のようないわゆる一般条項をどのようにエキスパートシステムの中に組み込むのが適切であるかを中心に検討を進めた。さしあたり、当該条項を適用する場合に日本の裁判が民法1条をどのような表現(常套表現)を用いているかを判例を用いて検討した。第2に、認知科学的モデルとの関係で、心の機能主義的な説明を明らかにすることに努めた。そこでは、より自然主義的な傾向の強まる中で知識を扱う心の振る舞いをどのような構図のもとに捉えることが最適かという問題に焦点を絞って研究してきた。エキスパートシステムとなじむ心の構図は機能主義と表象説によって説明できるという予想のもとにさまざまな可能性を哲学、認知科学を射程に入れながら考察し、心振る舞いの計算的な側面を生物的な理由によって説明する可能性も考察した。第3に、手段としての知識と区別された「場」ないし「環境」としての知識がもつ特質について考察を進めた。環境としての知識は、ちょうど故郷の山河が自己形成の環境となると同時に自己のアンデンティティの一部となるように、二重の意味で自己形成機能がある。同じ情報が目的実現のための手段として働くと同時に自己形成を行いうる機序について、自己知概念を軸に考慮すれば、統合的なシステムとして知識活動を捉える可能性が出てくる。このことから得られる知見がエキスパート・システムのもつべき性能決定の際に標準を与えうることを示唆した。 法社会学班は前年度の行った裁判官経験者に対する郵送調査の分析を継続し、裁判官は認知の枠組みを非常に強い職業的社会化のもとで形成していることを示した。
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[Publications] 松村良之・太田勝造・岡本浩一: "裁判官の判断におけるスジとスワリ(1)" 判例タイムズ. 911. 86-89 (1996)
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[Publications] 岡本浩一・松村良之・太田勝造: "裁判官の判断におけるスジとスワリ(2)" 912. 60-65 (1996)
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[Publications] 太田勝造・松村良之・岡本浩一: "裁判官の判断におけるスジとスワリ(3)" 判例タイムズ. 916. 49-58 (1996)
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[Publications] 松村良之・太田勝造・岡本浩一: "裁判官の判断におけるスジとスワリ(4)" 判例タイムズ. 919. 66-74 (1996)
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[Publications] 岡本浩一・松村良之・太田勝造: "裁判官の判断におけるスジとスワリ(5)" 判例タイムズ. 921. 67-74 (1996)
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[Publications] 太田勝造・松村良之・岡本浩一: "裁判官の判断におけるスジとスワリ(6)" 判例タイムズ. 923. 88-97 (1996)
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[Publications] 松村良之・太田勝造・岡本浩一: "裁判官の判断におけるスジとスワリ(7)" 判例タイムズ. 925. 100-106 (1997)
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[Publications] 森際康友: "環境問題における国家・法の任務" 法哲学年報「環境問題の法哲学」. 1995. 18-34 (1996)
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[Publications] 松浦好治: "書評「William P. LaPiana, Logic and Experience : The Origin of Modern American Legal Education (Oxford,1994)」" アメリカ法(日米法学会). 1997-1(発表予定). (1997)
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[Publications] 松浦好治: "ニュー・ディールとリ-ガル・リアリズム" アメリカ法(日米法学会). 1997-2(発表予定). (1997)
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[Publications] 森際康友: "知識という環境" 名古屋大学出版会, 278 (1996)