1993 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸組成とその炭素・窒素安定同位体組成から見る生物起源粒子の輸送過程
Project/Area Number |
05216101
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
門谷 茂 香川大学, 農学部, 助教授 (30136288)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南川 雅男 北海道大学, 大学院・地球環境研究科, 助教授 (10250507)
|
Keywords | アミノ酸 / 安定同位体 / 影濁粒子 / 沈降粒子 / 植物プランクトン / 動物プランクトン / セディメント・トラップ |
Research Abstract |
本研究では海洋生物起源の有機物の変化とアミノ酸組成の変化、ならびにそのアミノ酸の各同位体組成の変化を詳しく見ることによって、海洋の有機物粒子の同位体組成が鉛直輸送過程でどのように変化するかを調べてきた。同位体組成の変化様式で大半の海洋有機物の炭素・窒素同位体の分布は充分説明可能である。有機物の沈降・堆積過程での同位体組成の変化には有機物粒子に含まれるアミノ酸などの生物に利用され易い分子が水柱内で遊離、再利用されることと、その一方で難分解性の分子の深層への選択的輸送が関係していると考えられる。そのような観点で、本研究で分析してきた各種海洋生物のアミノ酸の同位体分析の結果を評価すると次のことが示唆される。本研究で明らかになったアミノ酸の同位体分布は、それぞれの生物種で全体の同位体組成は異なるものの、アミノ酸についてのδ値パターンは共通していることが明らかとなった。炭素ではグリシン、アラニンなどの低分子アミノ酸の^<13>C含量が高いこと、窒素ではバリン、ロイシン、グルタミン酸などの^<15>N含量が高いことがいえるが、むしろ食物連鎖による変化が大きく働いていることが見て取れる。過去の研究ではセディメントトラップ補足粒子のアミノ酸組成では植物プランクトンに比べてバリン、ロイシンなどの存在率が減少していることが報告されている。このことは粒子の分解利用によって有機粒子の同位体組成はδ^<13>Cでより重く、δ^<15>Nでより軽くなる同位体変化を予想させるものである。しかしその変動の幅はせいぜいアミノ酸全体で数〓の変化をもたらす程度のものである。これらのことから、今回得られた珪藻の培養、枯死実験で得られた非常に大きな同位体の変化は、アミノ酸の組成変化よりはむしろ、その他の有機成分(脂質、炭水化物など)に起因すると考えるのが妥当であろう。
|