1993 Fiscal Year Annual Research Report
Roothaan-Hartree-Fook原子波動関数の改良
Project/Area Number |
05227202
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
古賀 俊勝 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (90113688)
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Keywords | 原子波動関数 / 電子状態 / Hartree-Fock法 |
Research Abstract |
基底関数展開を用いるRoothaan-Hartree-Fock(RHF)近似の原子波動関数は、それ自身、原子の電子状態の解明に基本的情報を与えるだけでなく、分子系への応用における基底関数を提供するという重要な役割を持つ。1974年、ClementiとRoetti(CR)によって発表された、HeからXe原子までのRHF波動関数は、Slater型基底関数(STF)を用いた標準的な原子波動関数として、様々な研究に利用されている。しかしながら、CR波動関数には種々の問題点がある事も知られている。RHF原子波動関数が原子分子研究に果たす重要性を考えて、CR原子波動関数表の吟味と改善を行った。ここでは、Single-Zeta(SZ)およびDouble-Zeta(DZ)近似波動関数とNear Hartree-Fock波動関数の結果を報告する。 通常の(conventional)SZ関数をCSZ、今回の改善された(improved)SZ関数をISZと呼ぶ。まず、CRによるCSZの{ζ}は妥当である事を確かめた。次に{n}と{ζ}を同時に最適化した結果、He-Mg原子はCSZが最適であった。しかし、Al-Xe原子のすべてに、CSZより優れたISZが見出された。全エネルギーの改善はAlで0.0015auであるが、Xeでは6.4auにも達する。最適な{n}に規則性は無いが、次の傾向が見られる。(i)ns(n≧2)AOでは、3s-STFが全体的に良い近似を与える。(ii)p-AOに対しては、2p-STFが良い。しかしAs原子以降、3p-STFも寄与する。(iii)d-AOには、3d-STFが適切である。全エネルギーの改善とともに、軌道エネルギーも大きく改善された。 {ζ}を再最適化した結果、CRによる通常のDZ関数(CDZ)の{ζ}は十分正確でない事がわかった。再最適化によるCSZの全エネルギーの最大の改善は、Se原子で0.0040auであった。また、彼らのRh原子の計算結果は完全な誤りである。{n}と{ζ}の同時最適化により、更に改善されたDZ関数(IDZ)がLi-Xe原子のすべてに見出された。CSZに対するISZの全エネルギー低下は、最大で0.0267au(Pd原子)であった。SZの場合と同様、軌道エネルギーもほとんどの原子で改善された。 Near Hartree-Fock波動関数として頻繁に使用されているCR波動関数の全エネルギーの数値的Hartree-Fock法(NHF)全エネルギーに対する誤差を調べると、原子番号Zの関数として極めて不規則である。また、いくつかの原子では、ビリアル比が真の値-2からかなり離れている。そこで、CR波動関数の軌道指数の再最適化を行った。その結果、HeからXeまでの全原子に対して、全エネルギーの改善が得られた。最大は、Cd原子の0.053a.u.である。ビリアル比の誤差は全ての結果において1.0×10^<-7>以下であった。He-Kr原子では、全エネルギーのNHF値からの誤差は、0.001a.u.以下に減少し、誤差はZの滑らかな関数となった。軌道エネルギーも改善された。しかし、Rb-Xeでは、今回の改善は原子価領域の犠牲を伴っており、第4周期原子に対しては、CRの波動関数は基底関数が不足している事を示している。同様の状況が、CR原子波動関数表のカチオンとアニオンにも見られる。STFの主量子数の変分的決定を含むNear Hartree-Fock波動関数の作成は現在も進行中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Koga: "Optimal Single-Zeta Description for the Atoms Al through Xe" Theoretica Chimica Acta. 85. 363-370 (1993)
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[Publications] T.Koga: "Medium-Size Gaussian Basis Sets for Hydrogen through Argon" Theoretica Chimica Acta. 85. 391-394 (1993)
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[Publications] T.Koga: "Roothaan-Hartree-Fock Wave Functions for Atoms with Z<54" Physical Review A. 47. 4510-4512 (1993)
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[Publications] T.Koga: "Improved Double-Zeta Description for the Atoms Li through Xe" Bulletin of the Chemical Society of Japan. 66. 3135-3141 (1993)
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[Publications] A.J.Thakkar: "Double and Quadruple Zeta Contracted Gaussian Basis Sets for..." Intern.J.Quantum Chemistry,Symposium. 27. 343-354 (1993)
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[Publications] T.Koga: "Even-Tempered Roothaan-Hartree-Fock Wave Functions for..." Theoretica Chimica Acta. 86. 477-485 (1993)