1993 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙における芳香族化合物の生成消滅反応の理論的究明
Project/Area Number |
05227212
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
相原 惇一 静岡大学, 理学部, 教授 (40001838)
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Keywords | 宇宙化学 / PAH / ベンゼン系芳香族炭化水素 / PM3分子軌道法 / CH結合 / 非ベンゼン系芳香族炭化水素 |
Research Abstract |
1.宇宙における芳香族炭化水素の生成消滅反応の解明を目的として、PM3分子軌道法を用い、典型的な多環式芳香族炭化水素(PAH)であるベンゼノイド炭化水素から同時、または逐次的に2個の水素原子を解離させるのに要するエネルギーの推定を行った。分子内で隣り合った2個の水素原子を水素分子として解離させるのに要するエネルギー(約100kcal/mol)は、1個の水素原子を解離させるのに要するエネルギーと同程度であった。このことは、PAHの質量スぺクトルで、親分子イオンに次いで質量数M-2のイオンのシグナルが強いことと関係していると考えられる。 2.2個の水素原子が逐次的に解離する場合は、それぞれの段階で約100kcal/molのエネルギーを必要とする。ナフタレンやアントラセンのようなポリアセン分子の1、4位の水素原子が逐次的に解離する場合は、環の数が1つ少ない2、3-ジエチニル芳香族化合物を生成することがわかった。この場合の2段階目の反応に要するエネルギーはかなり小さい。宇宙の紫外線照射場では、ポリアセンのようなコンパクトでないPAHはあまり存在しないと考えられるが、これらの分子はこのようなタイプの環開裂反応によって分解する可能性が大きく、宇宙で生成しても寿命があまり長くないためであろうと推測される。 3.一連の非ベンゼン系芳香族炭化水素から水素原子1個を解離させるのに要するエネルギーを計算し、小さな環に結合した水素原子ほど一般に大きな解離エネルギーを必要とすることがわかった。このことと関連して、PAHでとなりの位置にCH結合をもたないCH結合(いわゆるソロ水素)が解離しにくいのは、解離した分子の歪みのエネルギーが大きくなるためではないかと考えられる。
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[Publications] 相原惇一: "サッカーボール型分子C_<60>の天文学" 天文月報. 86. 193-200 (1993)
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[Publications] 相原惇一: "Orientation in Electrophilic Substitution and Aromaticity" MATCH. 29. 35-50 (1993)
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[Publications] 相原惇一: "Aromatic Character of Typical C_<60> Derivatives" Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 2. (発表予定).
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[Publications] 相原惇一: "Aromaticity and Superaromaticity in Cyclopolyacenes" Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 2. (発表予定).
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[Publications] 藤原健次: "Stability of the PAH Molecules Exposed to Ultraviolet Radiation" Grain Formation Workshop. (発表予定).