1993 Fiscal Year Annual Research Report
環状オリゴ糖の不斉認識機構の解明とキラル分離剤としての評価
Project/Area Number |
05234229
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
加納 航治 同志社大学, 工学部, 教授 (60038031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺 政人 同志社大学, 工学部, 講師 (00183806)
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Keywords | シクロデキストリン / 不斉認識 / ビナフチル化合物 / 軸不斉 / アルキル化シクロデキストリン / 鍵と鍵穴 / エントロピー支配 / アミノ化シクロデキストリン |
Research Abstract |
1.アルキル化シクロデキストリンの不斉認識機構の解明 シクロデキストリン(CDx)の全ての水酸基をメチル化したトリメチル-beta-シクロデキストリン(TMe-beta-CDx)が、ビナフチル化合物の軸不斉を高い効率で認識することをすでに見いだしており、今回はこのTMe-beta-CDxによる不斉認識機構の解明を目指して研究を実施した。まず、メチル基はCDx空洞の不斉な環境を増幅するという仮説を立て、この仮説の正否を確かめる実験を行なった。ジメチル-beta-シクロデキストリンの3位の水酸基を箱守法によってエチル化したエチルジメチル-beta-シクロデキストン(EtDMe-beta-CDx)を合成し、ビナフチル類の不斉認識を分光学的に検討した。その結果、用いたビナフチル類全てに対し、EtDMe-beta-CDxの不斉認識能はbeta-CDxそのものやTMe-beta-CDxよりも高いことが明かとなった。 次に問題とした事項は、ビナフチル類とTMe-beta-CDxとの包接錯体の結合力の特定である。CDxに導入されたアルキル基がCDx環のキラルな歪みを増幅するのであれば、その不斉認識は“鍵と鍵穴"式機構である可能性がある。そこでビナフチル類との結合の熱力学的パラメータを求めた。その結果、TMe-beta-CDxが好むエナンチオマーとの結合においてはエントロピー的に有利な錯形成が進行することが明らかとなった。このことにより、アルキル化CDxの軸不斉化合物に対する高い不斉認識には鍵と鍵穴式機構が適応されるという興味ある結論を導きだすことができた。 不斉認識に対する新しい概念の創製 不斉認識の新しい概念として、2点における静電相互作用と1つの不斉空洞への取り込みを提案し、その実施としてCDxの1級水酸基をアミノ化したCDxを合成し、実際にこの概念が適応される系を2例見つけた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 加納航治: "Chiral recognition by cyclic oligosaccharides.Enantioselective Complexation of binaphthyl derivatives with cyclodextrins" Supramolecular Chemistry. 2. 137-143 (1993)
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[Publications] 加納航治: "Selectivities in Cyclodextrin Chemistry" Bioorganic Chemistry Frontiers,Springer-Verlag. 3. 1-23 (1993)
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[Publications] 加納航治: "環状オリゴ糖の識別機構" モレキュラー・キラリティー,化学増刊,化学同人. 123. 65-72 (1993)