1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05242205
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有本 信雄 東京大学, 理学部, 助教授 (60242096)
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Keywords | 銀河団 / 楕円銀河 / 化学進化 |
Research Abstract |
(1)銀河団での元素合成の鍵となるIa型超新星の寿命を太陽系近傍のデイスクの主系列星の〔O/Fe〕比と〔Fe/H〕頻度分布、更に残存するガス量とを観測拘束条件として用い、太陽系近傍の化学進化の考察から25±5億年と決定した(石丸,有本,吉井,準備中)。球状星団の星にはIa型超新星の痕跡が見られない。この事実とこの研究の結果は銀河系のハローの収縮のタイムスケールがIa型超新星の寿命よりも長い、即ち数十億年以上であることを示唆する。 次に、(2)楕円銀河の銀河風成因説(Arimoto & Yoshii 1987)に立脚して、初期質量の異なる楕円銀河のそれぞれについて、銀河風発生時と以後に外空間に放出されるガスと各重元素(酸素、鉄等)の質量を解析的に求めた。その結果、銀河風発生後に放出されるガスと重元素の質量は銀河風時のそれとほぼ同量であり無視できないことがわかった。 以上を基礎にして、(3)銀河団の形成過程と化学進化を記述するモデルをトップダウン(T-D)仮説とボトムアップ(B-U)仮説のそれぞれに基づいて構築した(石丸,有本)。それにより銀河団ガスに含まれる鉄の質量と楕円銀河の総光度の比は一定となり、観測値はどちらの仮説でも(1)と(2)で求めた銀河内での元素合成によって定量的に説明できることを明らかにした。またT-D仮説に従えば、銀河団ガスの鉄組成が過去100億年以上に遡ってもほとんど現在の値と変わらないのに対して、B-U仮説では原始ガス雲の流入とともに銀河団が成長する効果により、鉄の組成が過去に遡るほど増加することを定量的に明らかにした。両者の違いは「あすか」衛生で検出可能な限界にある。B-U仮説では低質量の銀河団は途中で成長が止まった状態にあると考えられる。このとき、大質量の銀河団ほど鉄の存在量が低いという観測事実は銀河団の成長とともに原始ガスが流入して銀河から放出された重元素を稀釈するという効果によるものとして自然に説明できるが、T-D仮説に基づいた場合には、大規模な銀河団ほど銀河の生成率が何らかの原因によって低かったと仮定する必要がある。
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Research Products
(1 results)