1993 Fiscal Year Annual Research Report
ATP結合蛋白質のラウエ法による動的結晶解析のための実験法の開発
Project/Area Number |
05244201
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
畑 安雄 京都大学, 化学研究所, 助教授 (10127277)
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Keywords | ATP / ラウエ法 / 動的結晶解析 / グルタチオン合成酵素 / フレキシブルループ / X線結晶解析 |
Research Abstract |
生体反応の担い手である酵素のなかにはATPを補酵素として利用するものが数多くある。これらの酵素反応機構を理解するうえで時分割ラウエ法による動的結晶解析は有力な方法である。しかし、この方法を一般化するためには実験するうえで解決しなければならない問題が幾つかある。そこでX線結晶解析により既に2A分解能で立体構造を決定した大腸菌由来グルタチオン合成酵素を用いてラウエ実験法の開発を行った。まず動的構造解析するためには静的構造を精度良く解析して酵素の構造のみならず基質の結合位置および結合時の構造変化を明らかにしておく必要がある。本酵素の基質であるATPとγ-Glu-Cysを結合した複合体酵素の結晶を調製し、放射光を用いて収集した回折強度データを用いて立体構造を決定した。その構造と酵素自身の構造とを比較して基質の結合場所および結合時の構造変化を明らかにした。酵素中に含まれるフレキシブルループは、基質が結合しても固定された構造を採らないことが判った。次にラウエ実験に適する反応速度を実現するために変異酵素を調製した。ATP結合に関与すると思われるアルギニンをリジンに変えた変異酵素R210Kの反応速度は野生型酵素の1/500で、反応速度をもう一桁遅くするとラウエ実験に適することが判った。従って、低温で実験すればよいと思われる。ラウエ実験には高品質の結晶が必要である。本酵素の場合、種々の沈澱剤で結晶化したが、質は殆ど変わらなかった。むしろ、同じバッチの結晶でも質が異なり、一般に少し小さめの結晶の方が質が良いことが判った。flash photolysisによる反応トリガー法は、光の強さや結晶の大きさに依存するので条件を一定にするのが難しかった。更に追求する必要がある。以上の結果は一般的に適用できるものであると思われる。今後、Zn-プロテアーゼの反応機構解析にも適用してみる予定である。
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