1993 Fiscal Year Annual Research Report
Phytotelmataの昆虫群集構造:棲息場所の構造と種間関係
Project/Area Number |
05257101
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Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
茂木 幹義 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (00039538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽田 貞滋 信州大学, 理学部, 助手 (00192625)
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Keywords | ファイトテルマータ / 動物群集 / 節足動物 / 生物多様性 / 棲息場所 / ニッチ |
Research Abstract |
ウツボカズラ捕虫嚢、クワズイモ葉腋、樹洞、竹切株などの溜まり水に棲息する蚊幼虫を中心とした水生節足動物群集の構造解明、および多様性が高い群集の形成と維持を可能にする要因の分析を進めた。ウツボカズラ捕虫嚢群集については、今年度の文部省科学研究費海外学術調査で新たに得られたイリアンジャヤ、モルッカ、カリマンタン、ジャワ、スマトラのサンプルの同定を進め、大きなグループ分けは終了したが、詳細な同定は未了である。群集の多様性に係わる要因についての最終的な分析は次年度になされるが、既同定サンプルと文献資料の分析から、多様性の高い群集が存在する地域(たとえばボルネオのような単位)でも、ウツボカズラ種あたりの棲息地は多様性の低い群集しか存在しない地域と同じレベルにあることが明らかになった。この事実は、ある地域のウツボカズラ種数によって表される棲息場所の多様性が多様な種にすみつきの機会を提供し、その結果、個々のウツボカズラ種の個々の群落の群集の多様性も高くなったことを強く示唆する。群集研究材料としてのPhytotelmataの利点を生かして得られた結果だが、群集多様性の形成に係わる最も基本的な一般性の高い側面と考えられる。クワズイモ葉腋の群集については、群集多様性における南北にわたる地理的勾配の有無を確認するため南九州から南西諸島にかけてのサンプルを更に収集し、おおまかな同定を進めた。樹洞、竹切株などの群集については、佐賀県加部島での3年間の調査結果を分析し、これらの棲息場所での多種共存は、たとえ捕食者が存在しなくても、ニッチの分化により維持される可能性があることを明らかにした。また樹洞の湛水率と降雨量の正の相関を利用して過去の気象データから過去の樹洞湛水率変動を推測できることを示した。これらの結果は、疾病媒介蚊の管理という応用面からも意義がある。
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[Publications] Sota,T.& M.Mogi: "Desiccation survival time of two Aedes(Stegomyia)mosquito eggs from North Sulawesi" Jpn.J.Entomol.61. 121-124 (1993)
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[Publications] Sota,T.: "Performance of Aedes albopictusand A.riversi larvae(Diptera:Culicidae)in waters that contain tanic acid anddecaying leaves:is the tree hole species better adapted to tree hole waters?" Ann.Entomol.Soc.Amer.55. 450-457 (1993)