1993 Fiscal Year Annual Research Report
干潟底生群集の構造決定に及ぼす生活史初期の個体群変動と偶発的種間関係の影響
Project/Area Number |
05257102
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
玉置 昭夫 長崎大学, 水産学部, 助教授 (40183470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 靖 九州女学院短期大学, 児童教育学科, 助教授 (90040063)
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Keywords | 干潟底生群集 / 十脚甲殻類 / ニホンスナモグリ / keystone種 / 浮遊幼生 / 分散と回帰 / 偶発的種間関係 / 多種共存機構 |
Research Abstract |
熊本県天草下島の西北隅にある砂質干潟には、底生群集のkeystone種であるニホンスナモグリ(十脚甲殻類)が高密度で生息している。干潟は有明海と東シナ海の間に介在する橘湾に含まれるが、本種個体群は湾1や有明海に点在する他の干潟個体群と浮遊幼生(ゾエア1-6期とデカポデイッド期〔着底期〕)の分散を通じて相互に交流し、しかもそれぞれの底生群集構造を偶発的種間関係によって支配している可能性がある。まず、対象干潟に由来する幼生の分散と回帰の実態を明らかにするため、1993年7月から10月までの期間中に、1.プランクトンネットによる幼生の垂直曳き採集を行い、2.大潮小潮周期に伴う新規加入量の変化を把握した。橘湾には東シナ海由来の高塩分水塊と有明海由来の低塩分水塊がそれぞれ南北に位置し、両者の間には明瞭なフロントが認められた。1-2期ゾエアは湾全体に広がっていたが、3-6期ゾエアの分布は南側水塊にほぼ限定されていた。有明海では、ゾエア全期とも湾中央部に高密度域が認められた。対象干潟産の幼生が有明海に流入することはあっても、後者由来の幼生が干潟に定着する可能性は低いと推測された。デカポデイット幼生については、1.昼間海底にとどまっており、夜間水層に浮上すること、2.干潟への新規加入は大潮初め頃を中心に離散的に起こることが明らかになった。浮遊幼生の干潟への回帰率は約0.1%と推定された。また、上記と並行してニホンスナモグリを含む底生群集構成種の成体の定期採集も順調に消化しつつあり、1994年6月に完了する予定である。スナモグリが他種に与える影響は、1.基室攪はんによって偶発的に発現されること、2.波当たりが中程度の場所で最も大きいことが明らかになった。今後は、浮遊幼生個体群の空間的広がりと回帰機構を海洋構造と関連させてさらに解明し、また、これまでに蓄積された成体の試料の解析を進めることにより、課題の完遂を目指す。
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Research Products
(1 results)