1993 Fiscal Year Annual Research Report
人間-病原体システムにおける動態と人工的淘汰圧下における進化の解明
Project/Area Number |
05257206
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
瀬尾 明彦 広島大学, 医学部, 助手 (80206606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水流 聡子 広島大学, 医学部, 助手 (80177328)
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Keywords | 病原体 / 薬剤耐性 / 進化 |
Research Abstract |
薬剤使用という人工的淘汰圧下が病原体の進化に及ぼす影響の検討として、MRSA(Methicillin resistant Staphylococcus aureus)を念頭におき、以下の3種類の数学的解析とシミュレーションを行った。 (1)ある免疫機能を持つホスト(患者)が、病原体に感染して抗生剤により治療される際の体内での病原体の増殖を表すモデルを作成し、耐性菌が薬剤により選択される過程を検討した。このモデルにより、免疫機能等とのバランスで病原体が消滅あるいは常在化することや、薬剤使用下で耐性菌が増加すること(医療による選択の存在)が再現できた。また、一般に耐性菌は内的増殖率が低いことから非耐性菌(或いは低耐性菌)に淘汰されるはずであるが、耐性菌と共存できる別な細菌Xを仮定すると、ある条件においてはこのようなXが存在しうることも確認された。 (2)耐性菌のみ・非耐性菌のみ・Xのみ・耐性菌+Xのいずれかに感染した集団の動態をモデル化した。このモデルにより、Xが存在しないときは集団中に共存できない耐性菌と非耐性菌が、Xが存在することにより共存可能となることが確かめられた。また、このような性質を持ったXの保菌者の頻度は比較的低い可能性が示唆された。 (3)抗生物質による治療を受けている患者と耐性菌に感染した患者間の伝染(院内感染)をモデル化した。このモデルにおいて耐性菌の保持者が増加する条件から判断すると、感染を予防するには、感染率を下げること、耐性菌からの治癒率を高めること、退院率を高めることなどが有効となった。実際の医療行為としては、消毒の徹底・耐性菌に対する薬剤治療・適切な入院期間の設定(入院期間を極力短くする)などがこれに対応しており、モデル上、これらの行為が有効であることが示唆された。
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