1993 Fiscal Year Annual Research Report
形質転換型ラン藻における二酸化炭素固定の環境適応機構
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05266203
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
鈴木 英治 茨城大学, 理学部, 助手 (60211984)
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Keywords | 遺伝子発現 / カーボニックアンヒドラーゼ / 形質転換 / 光合成 / シアノバクテリア / シネココッカス / 二酸化炭素 / 藍藻 |
Research Abstract |
微細藻類やシアノバクテリアのカーボニックアンヒドラーゼ(CA)活性は、培養時のCO_2濃度を1〜5%(高CO_2細胞)から通常の空気レベル(低CO_2細胞)に低下させると増大する。SynechococcusPCC7942株では、CA遺伝子を破壊すると高CO_2濃度要求性を示すことが明らかになっている。同株では、CAのmRNA、活性レベルとも極めて低いが、その生理的意義を解析する目的で、バクテリアのtacプロモーターの挿入によるCA発現量の増大を試みた。 CA遺伝子開始コドンの上流147bpを欠失させ、ここにtacプロモーターとカナマイシン耐性遺伝子を連結したカセット、あるいはカナマイシン耐性遺伝子のみを挿入した形質転換株を構築し、それぞれΔSP::KT1、ΔSP::K2と命名した。細胞破砕液のCA活性は、^<13>C^<18>O_2を基質したときの同位体交換反応の速度から算定した。 野生株のCA活性は、高CO_2細胞(66U/mg Chl)に比べ低CO_2細胞(110)で高く、生育時のCO_2濃度による活性の変化が確認された。ΔSP::K2株では、CO_2条件にかかわらず活性は極めて低く(7-8U/mg Chl)、CA遺伝子上流領域は発現に必須であることがわかった。ΔSP::KT1株における活性は、高CO_2細胞で43、低CO_2細胞で114U/mg Chlであった。すなわち、CAはtacプロモーターに依存して発現したが、野生株と比較して発現量を顕著に増大させる効果は認められなかった。しかし、遺伝子の上流領域を除去したにもかかわらず、生育時のCO_2濃度による変化が認められたことから、CA活性調節機構については以下の可能性が考えられる。1)転写制御を担う配列が、遺伝子のコード領域内あるいは下流域に存在する。2)活性調節は、酵素生合成の転写後の段階においておこる。3)tacプロモーターを含むDNA断片にCO_2濃度変化に応答する配列が存在する。
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