1993 Fiscal Year Annual Research Report
H_2^<15>O法PETスキャンによる読字の神経機構の解析
Project/Area Number |
05267210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 誠 東京大学, 医学部(医), 助教授 (90107665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 靖久 東京大学, 医学部(医), 医員
百瀬 敏光 東京大学, 医学部(医), 助手
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Keywords | 高次脳機能 / 神経心理学 / PETスキャン / 読み / 文字 |
Research Abstract |
読字の神経機構を明らかにするため、PETスキャンを用いて、読字中の局所脳血流量を測定し、読字における大脳賦活領域を求めた。これまでに、漢字とかな文字の音読課題の解析をすでに行ってきたので、今年度は、3文字かな有意語の黙読課題を負荷し、音読と黙読との比較検討を行った。 右手利き正常被験者に対して、スクリーン上に2秒に1回、300ミリ秒間提示される3文字かな有意語を口や舌を動かさぬようにして黙読する黙読課題と、スクリーン上に提示された注視点を固視する注視課題の2種類を負荷し、課題遂行中にH_2^<15>Oを生理的食塩水の形で注射して、PETスキャンによる局所脳血流量の測定を行った。それぞれの課題につき3回づつの測定を行い、黙読課題の平均値から注視課題の平均値を減算して、黙読過程において特異的に賦活される大脳領域を求めた。賦活領域の同定は、各被験者毎に予め撮影しておいたMR画像との重ね合わせを基にし、径16ミリメートルの関心領域における局所脳血流量の増加率が5パーセント以上の領域を有意の賦活とした。黙読課題で有意に賦活された領域は、音読課題により少なく、また賦活程度も少なかった。有意に賦活されたのは、両側後頭葉内側部と外側部、左側頭葉後下部、左横回であり、音読時に賦活された、ブローカ領域を含む左下前頭回後部には有意の賦活が見られなかった。 これまでの欧米からの報告には、黙読時にもブローカ領域を含む左下前頭回後部には有意の賦活がみられたというものがあるが、今回のわれわれの実験では、これは否定された。また、従来から読字の中枢と考えられてきた左下頭頂小葉には、音読においても黙読においても有意の賦活は見られないことが明らかになった。今後は、左下頭頂小葉にて営まれるとされてきた数字の読みや計算の能力について、同様の解析を行っていきたい。
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[Publications] Sakurai,Y.et al: "Semantic process in kana word reading" Neuroreport. 4. 327-330 (1993)
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[Publications] 櫻井靖久 ほか: "PETによる仮名文字の意味処理過程の検討" 神経心理学. 9. 202-208 (1993)
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[Publications] 百瀬敏光: "PETスキャンによるactivation study" 神経研究の進歩. 38(印刷中). (1994)
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[Publications] 櫻井靖久,百瀬敏光: "H_2^<15>O-PETによる漢字および仮名文字の読字過程の解析" 神経研究の進歩. 38(印刷中). (1994)
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[Publications] 櫻井靖久: "PETスキャンでみた読みの機構" Brain Medical. 6(印刷中). (1994)
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[Publications] 岩田誠: "読み書きと脳" 認知科学会雑誌. (印刷中). 171-179 (1994)
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[Publications] Iwata,M.: "Annual Bulletin Research Institute of Logopedics and Phoniatrics" Clinical and pathological studies of slowly progressive aphasia without global dementia, 9 (1994)
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[Publications] 櫻井靖久 ほか: "PET,SPECTによる脳神経疾患診断" 言語のPET study(金原出版)(印刷中),