1993 Fiscal Year Annual Research Report
θ波に依存した嗅内皮質・海馬神経回路のダイナミックスに関する研究(発ガン遺伝子c-fosの発現を利用した研究)
Project/Area Number |
05267220
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
玉巻 伸章 福井医科大学, 医学部, 助手 (20155253)
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Keywords | c-fos / 嗅内皮質 / 貫通線維 / 歯状回 / θ波 |
Research Abstract |
神経回路の研究は、神経活動のパターンに依存したダイナミックなものとして、調べ直すことが必要になってきた。θ波は、中隔領域が海馬の活動様式をコントロールする際に生じる脳波である。θ波ONの状態では、歯状回顆粒細胞は活動が高く、アンモン角の錐体細胞は活動状態はスパースで低い。θ波OFFの状態では、逆に顆粒細胞の活動は低い。嗅内皮質は第2・3層の細胞により、海馬の全ての領域に入力するが、たとえ一定の入力をするとしても、受ける側の状態の違いにより、海馬内に起こる変化は、全く違ったものとなることが考えられる。この様な神経活動の状態に依存した神経回路のダイナミックスを調べるのに、発ガン遺伝子c-fosの発現に依る方法がある。本研究の目的は、c-fos発現分布の違いから、海馬神経回路のダイナミックスを探り、海馬の短期記憶形成と長期記憶への変換のメカニズムに迫ることにある。ラット覚睡時に嗅内皮質表面に植え込んだ慢性電極で高周波刺激を与え、海馬でのc-fos蛋白の発現をc-fos蛋白に対する抗体を用いて免疫組織化学により、発現領域を3次元的に調べた。類似した既存の報告は総て、嗅内皮質の一部でなくPerfornt Pathを刺激しており、嗅内皮質からの総ての線維とCA1領域、海馬台からの線維を刺激することになる。この様な条件下では私の目指す処のデータは得られない。嗅内皮質表面のポイント刺激によるc-fos蛋白の発現は、海馬長軸方向に約1mmにおよび、長軸直行断面では総ての範囲に広がっており、嗅内皮質第2層星状細胞の軸索展開から考えられる情報の広がりと非常によく一致する。つまり嗅内皮質の一点からの情報は、歯状回、CA3領域全体の1/3に伝えられていると考えられる。今後は、θ波ONの状態、θ波OFFの状態、脳弓刺激下での、嗅内皮質表面刺激によるc-fos蛋白発現の3次元分布を調べていく。
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[Publications] Tamamaki,N.: "Projection of the entorhinal layer II neurons in the rat as revealed by intracellular pressuer-injection of neurobiotin." Hippocampus. 3. 471-480 (1993)
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[Publications] Gulyas,A.I.: "Hippocampal pyramidal cells excite inhibitory neurons via a single release site." Nature. 366. 683-687 (1993)
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[Publications] Sik,A.: "Complete axon arborization of a single CA3 pyramidal cell in the rat hippocampus,and its relation ship with postsynaptic parvalbumin-containing interneurons" Europian Journal of Neuroscience. 5. 1719-1728 (1993)