1993 Fiscal Year Annual Research Report
神経回路モデルによる感覚系及び記憶系における情報の時間コーディングの研究
Project/Area Number |
05267237
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 一郎 北海道大学, 理学部, 教授 (10207384)
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Keywords | 時間コーディング / 非平衡神経回路 / 動的記憶 / カオス / 嗅球 / ヘブ学習 / リアプノフ指数 / 非線形応答 |
Research Abstract |
本研究においては,カオスと学習との関係,カオス等の動力学的様相と時間コーディングとの関係を明らかにすることを目的とし,以下の主要な結果を得た。 1.カオスによる学習の増進。2.周期信号のカオスへの非線形変換。3.学習によるカオス状態の秩序化およびカオス化の増大。 以下順次これらを説明する。 1.対称ヘブ型結合回路に他のニューロン群によるゆっくり変化する場が影響を与える非平衡神経回路において,学習実験を行なった。この結果,カオス的応答の場合が,それ以外のいずれの場合よりも学習可能なパターン数が,増加することが示された。 2.情報の時間コーディングの問題を匂い情報処理を例として研究した。今回は嗅球での情報表現に焦点をしぼった。匂い情報は吸念においてのみ回路網に受け渡されるので,この系においては,回路網への入力は周期振動である。嗅球内の二層回路モデルを構築した。僧帽細胞同志の結合をパラメーターとして分岐を調べた。抑制性結合においては,定常スパイク応答,周期スパイク応答のみであり,興奮性結合の強度のある範囲でカオス応答がみられた。そこで,このようなカオス応答を行なうパラメーター値に固定し,以下のシミュレーションを行なった。 3.顆粒細胞から僧帽細胞へのネガティブフィードバックの結合強度を,ヘブ学習のアルゴリズムで変化させた。学習は嗅球がカオス状態であるときに行なった。異なる入力パターンの学習に対して,多くの実験を行なった。実験の度にリアプノフ指数を計算し,動的状態を決定した。その結果,70%のサンプル入力で,学習後のリアプノフ指数は低下した。つまり,カオス性が弱まり,より秩序化した。しかし,残りのサンプルにおいては,逆に学習によりカオス性が増し,軌道の多様度が増大した。このことは,カオス的活動の中にパターンを埋め込めることを示している。
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[Publications] I.Tsuda: "Dynamic-binding theory is not plausible without chaotic oscillation" Behavioral and Brain Sciences. 16. 475-476 (1993)
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[Publications] G.Barna: "A new method for computing Lyapunou exponents" Physics Letters A. 175. 421-427 (1993)
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[Publications] I.Tsuda: "How can chaos be a cognitive processor?" Proc.of the 7th Toyota Int.Workshop on“Toward the harnessing of chaos". (印刷中). (1994)
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[Publications] I.Tsuda: "Can stochastic renewal of maps be a model for cerebral cortex?" Physica D. (印刷中). (1994)
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[Publications] H.Okuda: "A coupled chaotic system with different time scales:Toward the implication of observation with dynamical systems" Int.J.of Bifurcation and Chaos. (印刷中). (1994)