1994 Fiscal Year Annual Research Report
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05270102
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内海 博司 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (20025646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松影 昭夫 愛知がんセンター研究所, 部長 (90019571)
宮越 順二 京都大学, 医学部, 講師 (70121572)
石崎 寛治 愛知がんセンター研究所, 部長 (70111987)
山本 和生 東北大学, 理学部, 教授 (20093536)
葛西 宏 産業医科大学, 産業生態科学研, 教授 (40152615)
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Keywords | 8-ヒドロキシングアニン(oh8Gua) / p53欠損細胞 / interstrand cross-links / PCNAとXPACタンパク質との相互作用 |
Research Abstract |
最近の分子生物学的手法の進歩により,生命の遺伝情報維持機構を司る酵素系の遺伝子が次々と同定されて、生物の他の基本的機能である遺伝情報の複製や転写の機構と密接な関係を保ち、機構間のクロストークが行われていることが理解され始めてきた。DNA損傷は、転写を止め転写修復結合因子と呼ばれる蛋白質を使って修復系を動員すると考えられるようになった。 遺伝情報維持機構としてここに取り上げるのは、DNA損傷を中心とする遺伝情報の変化がもたらす細胞内のシグナル伝達を解明し、DNA修復酵素系の働きを制御する仕組みを、主にヒトを中心とする真核生物において、細胞レベルで解明することを目的としている。 活性酸素による主要DNA損傷である8-ヒドロキシグアニン(8-OH-Gua)は、放射線のみならず環境中の多くの化学発癌物質によっても生じ、また生体内の酸素代謝により絶えず生じていると考えられる。大腸菌からは8-OH-Gua修復酵素が既に精製されているが、哺乳動物細胞については不明な点が多い。葛西らは、哺乳動物細胞を用いて、エンドヌクレアーゼ活性およびDNA結合タンパクの検出による修復酵素の精製、細胞老化と修復活性との関係明らかにした。山本らは、8-OH-Guaを修復する大腸菌のmut遺伝子を相補する酵母の遺伝子をクローニングしつつある。癌抑制遺伝子p53はDNA修復機構やゲノムの安定性維持機構や細胞周期に関与していると言われる。石崎らは、p53欠損トランスジェニックマウスよりp53欠損ホモ、ヘテロ、および野生型の細胞株を樹立し、細胞致死には大きな差がないが、p53欠損細胞では紫外線によって有意に高頻度のSCEが誘発されることを見いだした。松影らは、p53がDNA損傷からのシグナル因子としてDNA複製酵素ポリメレースやDNA修復と複製に直接関与するPCNAと相互作用する知見を得た。ヒトのDNAミスマッチ修復系は複数あり遺伝子安定性に重要であることが示唆されているが、その機構は不明である。宮越らは、p53遺伝子を欠失したヒト由来癌細胞に導入したp53遺伝子(正常または変異型)により、放射線感受性が感受性になったり抵抗性になることを見いだした。池島らはヒト葉酸脱水素酵素遺伝子の直上流に存在するDNAミスマッチ修復蛋白質1(MRP1)遺伝子のcDNAを単離した。三谷は、魚類細胞で紫外線誘発DNA損傷を長波長の光のエネルギーで修復する光回復酵素が、可視光や活性酸素により誘導される現象を見いだした。さらに暗所で働く除去修復系も同時に活性化されることを見いだした。二階堂らは紫外線損傷特異的な抗体を樹立して、その時間的修復機構を明らかにした。内海らはチャイニーズハムスター細胞の放射線感受性株を分離し、この変異株がカフェインで誘導される修復系を持つこと、cisPtの細胞死をrescueするがtransPtの細胞死をrescueしないことから、interstrand cross-linksを修復する酵素系の可能性を見いだした。 遺伝情報維持の機構を解明するという本研究は、複製や転写とともに細胞にとって基本的なDNAの動的安定性がいかに達成されているかを理解するために学術上重要な意味を持つ。また、遺伝情報維持の機構は、その過程が、蛋白質-DNA及び蛋白質-蛋白質間の未だ全く理解されていない相互作用の上に成立っていて、これらの相互作用の分子機構の解明は他の研究分野に大きな波及効果をもたらすと考えられる。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Utsumi,H.,Elkind,M.M.,: "Inhibitors of poly(ADP-ribose)synthesis inhibit the two types of repair of potentially lethal damage." Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.29. 577-578 (1994)
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[Publications] Homma,Y.,Tsunoda,M.,Ksai,H.: "Evidence for the accumulation of oxidative stress during cellular ageing of human diploid fibroblasts." Biochem.Biophys.Res.Commun.,. 203. 1063-1068 (1994)
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[Publications] Akasaka,S.,Yamamoto,K.,: "Hydrogen peroxide induces G:C to T:A and G:C to C:G transversion in the supF gene of Escherichia coli." Mol.Gen.Genet.243. 500-505 (1994)
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[Publications] Ishizaki,K.,et al.,: "Increased UV-induced SCE but normal repair of DNA damage in p53-deficient mouse cells." Int.J.Cancer. 58. 254-257 (1994)
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[Publications] Miyakoshi,J.,et al.: "A new designed experimental system for exposure of mammalian cells toextremely low frequency magnetic fields." J.Raidat.Res.35. 26-34 (1994)
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[Publications] Matsuoka,S.,Yamaguchi,M.,Matukage,A.: "D-tyep cyclin binding regions of proliferating cell nuclear antigen." J.Biol.Chem.269. 11030-11036 (1994)