1993 Fiscal Year Annual Research Report
エリスロポエチン受容体系のリガンド親和力を支配する糖蛋白質
Project/Area Number |
05274214
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 隆造 京都大学, 農学部, 教授 (60077378)
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Keywords | エリスロポエチン受容体 / 糖蛋白質 / 親和性 |
Research Abstract |
エリスロポエチン(EPO)は,赤血球産生を制御する最も重要な糖蛋白質である。EPOによるシグナル伝達は特異的なEPO受容体(EPO-R)を介して行われる。EPO-R遺伝子がクローン化された結果,EPO-Rはサイトカイン受容体スーパーファミリーに属することが明かとなった。一方赤血球系細胞上のEPO-Rには,高親和性部位(Kd=50pM)と低親和性部位(Kd=500pM)が存在する。EPO-Rに1ヶ所存在するN結合型糖鎖の有無が異なる親和力を示す原因であると考え,糖鎖結合部位を欠失させた変異型EPO-Rを作製し検討したが,糖鎖の存在と親和力とは無関係であった。しかし糖鎖合成阻害剤で野生型あるいは変異型EPO-Rを導入した細胞を処理すると,低親和性部位は消失し高親和性部位のみが存在するという事実を発見した。これはEPO-Rがクローン化された分子(α鎖)だけで形成されていると仮定すると,この現象を説明することはできない。すなわちこの現象は,EPO-Rには既知のα鎖と未知のサブユニット(β鎖)が存在し,β鎖の糖鎖がEPO-Rの親和力を支配することを示している。さらにEPOとEPO-Rを架橋剤で処理すると,EPOとα鎖の架橋ではなく,EPOとN結合型糖鎖を持つ未知タンパク質が架橋されることを見いだした。この結果はEPO-Rには,α鎖以外にもN結合型糖鎖を持つ未知タンパク質が存在することを示している。この未知タンパク質がβ鎖である可能性が高い。続いてEPO-Rα鎖が神経細胞にも発現していること,β鎖は赤血球系細胞と神経細胞では異なっていることを示す結果を得た。このことはEPO-Rが,β鎖の種類によりリガンドに対する親和力およびシグナル伝達の種類を変化させていることを示す。以上,EPO-Rの糖鎖が,リガンドに対する親和力およびシグナル形成に重大な役割を果たしていることを証明するために,β鎖の単離を試みている。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Seiji Masuda: "Functional erythropoietin receptor of the cells with characteristics:Comparison with receptor properties of erythroid cells" The Journal of Biological Chemistry. 268. 11208-11216 (1993)
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[Publications] Masaya Nagao: "Effect of tunicamycin treatment on ligand binding to the erythropoietin:Conversion from two classes of binding sites to a single class" Blood. 81. 2503-2510 (1993)
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[Publications] Yoshiko Yasuda: "Localization of erythropoietin and erythropoietin-receptor in postimplantation mouse embryo." Dev.Growth Differ.35. 711-722 (1993)
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[Publications] 佐々木隆造: "糖鎖の生物機能" 日本農芸化学会誌. 67. 1727-1728 (1993)
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[Publications] 永尾雅哉: "神経系におけるサイトカインの作用" Molecular Medicine. 31. 106-107 (1994)
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[Publications] 佐々木隆造: "レセプター-基礎と臨床-(井村祐夫、岡哲雄、芳賀達也、岸本英爾 編)" 朝倉書店, 944 (1993)
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[Publications] 佐々木隆造: "広川タンパク質化学第8巻、成長因子II(林恭三、古川昭栄編集)" 広川書店, 170 (1993)