1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05278118
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
井村 伸正 北里大学, 薬学部, 教授 (70012606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 孝司 京都大学, 医学部, 助教授 (80182301)
西村 泰治 熊本大学大学院, 医学研究科, 教授 (10156119)
鎌滝 哲也 北海道大学, 薬学部, 教授 (00009177)
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Keywords | 活性酸素 / 化学物質の毒性発現 / 薬物代謝 / 遺伝的多型性 / 免疫応答 / HLA分子 / 紫外線 / 色素性乾皮症 |
Research Abstract |
本研究では、環境因子による生体影響の個体差を決定する要因を明らかにするために、(1)様々な環境因子に対する感受性を支配する遺伝的素因が存在するか否かを検討し、(2)その本態と遺伝的多型性を遺伝子レベルで明らかにする、(3)すでに遺伝的要因が明かな場合には、その素因の有無や変異によって何故環境因子に対する感受性が変化するのか、その因果関係を生化学的に明らかにする、ことを目的として検討を行った結果、以下の成果が得られた。 活性酸素は環境汚染化学物質や放射線の生体影響発現に関与すると考えられるが、この活性酸素の毒性発現を修飾する生体要因の遺伝的差異について、各種系統のマウスを用いて検討した。その結果、通常の鉄濃度の飼料で飼育しても、活性酸素の毒性を増強する鉄を組織中に高濃度に蓄積する系統が見いだされた。ヒトにおいても高濃度の鉄蓄積には遺伝的要因が関与することが多く、環境因子としての酸化的ストレスの生体影響が鉄を介して遺伝的に異なって現われる可能性が考えられる(井村)。環境化学物質の代謝酵素であるチロクロームP4501A2(P4501A2)及びN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)に注目し、日本人205名についてこれら両酵素によって代謝されるカフェインの尿中代謝産物を測定して表現型の多型性を検討した。その結果、P450A2活性の高いヒトは86%であり、Family studyの結果、遺伝的多型性が存在することが示された。また、NAT活性の高いヒトは91%であり、PCR-RFLP法によるNAT遺伝子の遺伝子診断の結果と完全に一致した(鎌滝)。免疫応答の個体差を決定する遺伝要因のうち、特にヒト主要組織適合抗原系(HLA)に着目し、それぞれ慢性関節リウマチあるいはインスリン自己免疫症への感受性を決定していると考えられるHLA-DRB1*0405あるいはDRB1*0406分子に結合するペプチドの特徴を比較検討した。その結果、十数個のアミノ酸からなるペプチドは、3個のアミノ酸残基でDR分子と結合しており、更に2つのDR分子では、これらのDR結合性下アミノ酸残基として許容されるアミノ酸が数種類において異なっており、この差が自己抗原プペチドの結合性の差を生じることにより異なる自己免疫疾患への感受性を決定している可能性が推測された(西村)。光線過敏遺伝病である色素性乾皮症(XP)患者由来の紫外線高感受性変異体細胞を用い、紫外線に対する感受性を支配する要因を明らかにする目的で、まず、臨床症状が軽いA群XPの原因遺伝子であるXPAC遺伝子の突然変異部位を同定した。そして、XPAC遺伝子の一方の対立遺伝子からのmRNAによって出来る蛋白は機能的に重要な部分が大部分含まれることが判明し、そのために、患者の症状がかるいものと推察された。また、XP患者の約50%の皮膚腫瘍においてp53遺伝子の突然変異を見いだした(八木)。
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[Publications] N.Imura: "Tissue-specific expression of glutathione peroxidase gene in guinea pigs." Biochim.Biophys.Acta. 1173. 283-288 (1993)
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[Publications] N.Imura: "Possible involvement of active oxygen species in selenite toxicity in isolated rat hepatocytes." Arch.Toxicol.67. 497-501 (1993)
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[Publications] T.Kamataki: "Oxidative metabolism of omeprazole in human liver microsomes:Cosegregation with S-mephenytoin 4′-hydroxylation." J.Pharmacol.Exp.Ther.266. 52-59 (1993)
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[Publications] Y.Nishimura: "Difference in HLA-linked genetic background between mixed connective tissue disease and systemic lupus erythematosus." Tissue Antigens. 41. 20-25 (1993)
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[Publications] T.Yagi: "Ultraviolet-specific mutations inp53 gene in skin tumors in xeroderma pigmentosum patients." Cancer Res.53. 2944-2946 (1993)
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[Publications] T.Yagi: "A case of xeroderma pigmentosum complementation group F with neurological abnormalities." British J.Dermatology. 1280. 91-94 (1993)