1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05301002
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
柴田 正良 金沢大学, 文学部, 助教授 (20201543)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
別所 良美 名古屋市立大学, 教養部, 助教授 (10219149)
戸田山 和久 名古屋大学, 情報文化学部, 助教授 (90217513)
大沢 秀介 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (50233094)
横山 輝雄 南山大学, 文学部, 助教授 (80148303)
森際 康友 名古屋大学, 法学部, 教授 (40107488)
|
Keywords | 暗黙知 / 情報 / ネットワーク / 自然主義 / システムとしての知識 / 外在主義・内在主義 / 知の進化 / 合理性 |
Research Abstract |
1.本年度は、平成5年度における「個別分野」での暗黙知研究の成果を踏まえ、伝統的・表象主義的知識論の再編に向けて主に二つの領域において研究を行った。第一は柴田、戸田山、大沢、森際による知識現象の普遍的構造の探究である。第二は横山、田村、別所による、知識現象のより具体的より歴史的な局面の分析である。 2.(1)柴田は、内在主義と外在主義の対立を分析しつつ伝統的知識論の難点が「表象としての信念」という静態的知識概念にあることを明らかにし、それに代えて<関係概念としての知識>・<因果概念としての知識>を提起した。戸田山は、知識が正当化や理由といった概念ではなくむしろ情報という概念によって的確に捉えられる側面を持つことを明らかにし、「情報論的構え」に立脚した自然主義的知識論を提唱した。大沢は、伝統的知識論が知識主体を個人に求めることの誤りを指摘し、むしろ知識が<意味論的(相互解釈的)組織体>としてのネットワークに宿るということをコンピュータ・モデルを援用しつつ展開した。森際は、これら三者の研究を批判的に総合しながら、それぞれの限界を乗り越えるべき方向として「自然淘汰を生き延びる生命システムの自己組織・自己保存活動」という知識の描像を提起した。(2)横山は、人工知能研究から人工生命研究へと変貌するコンピュータ・シュミレーションのなかに暗黙知の次元を模索しながら、「コンピューテ-ショナルな知」として実現される知識の様態を示した。田村は、ロックに始まる経験主義的知識論の歴史的展開を追跡しながら、知識の基盤がいわゆるセンス・データではなく、暗黙の次元における探究の行為としての<経験の技術>の産物であることを明確にした。別所は、既成の知識体系からの自由としてのポラニ-の暗黙知概念を批判的に検討しつつ、暗黙知が具体的な共同体に内属する者としての個人の自由の基盤となることを明らかにした。
|
Research Products
(14 results)
-
[Publications] 柴田 正良: "経験主義の変貌と知識の全体論" 『分析哲学とプラグマティズム』所収,岩波書店. 243-269 (1994)
-
[Publications] 柴田 正良: "ある論争のかたち(黒田-滝浦論争に寄せて)" 『ウィトゲンシュタイン読本』所収,法政大学出版局.
-
[Publications] 森際 康友: "法思考と有限者の自由" 『法的思考の研究』所収,京都大学人文科学研究所. 333-355 (1993)
-
[Publications] 森際 康友: "訳者あとがき" 『行き方について哲学は何が言えるか』所収,産業図書. 371-390 (1993)
-
[Publications] 森際 康友: "移植医療制度の道理と法理" 法哲学年報1993. 86-87 (1994)
-
[Publications] 横山 輝雄: "科学的説明に関する二つのパラダイム" 科学哲学. 26. 15-24 (1993)
-
[Publications] 横山 輝雄: "現代科学哲学とポパ-" 『開かれた社会の哲学』所収,未来社. 124-130 (1994)
-
[Publications] 大沢 秀介: "<セミオシス>としての志向性" 愛知教育大学研究報告(人文科学). 43. 103-115 (1994)
-
[Publications] 大沢 秀介: "認識論的個人主義に対するパースの批判とその帰結" 愛知教育大学研究報告(人文科学). 44. 87-98 (1995)
-
[Publications] 戸田山 和久: "ウィトゲンシュタイン的科学論" 『科学論』所収,岩波書店. 139-170 (1994)
-
[Publications] 別所 良美: "ヘーゲルと近代性" 『ドイツ観念論と現代』所収,晃洋書房. 145-173 (1994)
-
[Publications] 別所 良美: "Wandel der Japanischen Politik?" 『Auf dem Weg nach Europe』所収,Duncker & Humbolt. (1995)
-
[Publications] 田村 均: "所与を越える道-ジョン・ロックとベ-コン主義-" 名古屋大学文学部研究論集(哲学). 40. 65-85 (1994)
-
[Publications] 田村 均: "感覚と知識-ジョン・ロックとトーマス・シドナム-" 名古屋大学文学部研究論集(哲学). 41. 105-131 (1995)