1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05301046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 靖二 東京大学, 文学部, 教授 (20011306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 義弘 二松学舎大学, 文学部, 講師 (60229416)
福井 憲彦 学習院大学, 文学部, 助教授 (60114625)
立石 博高 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (00137027)
石井 規衛 東京大学, 文学部, 助教授 (20168173)
青木 康 立教大学, 文学部, 助教授 (10121451)
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Keywords | 国民国家 / 地域主義 / 文化統合 / 政治文化 |
Research Abstract |
本研究は、ヨーロッパのいわゆる「近代化」推進の典型的な国民編成原理とされてきた「国民国家」に関して、各国内あるいは国家の枠組みを超える規模で展開する地域主義(regionalism)という視点を積極的に取り入れることで、各々の生成とその変容を比較史的に分析・検討することが目的である。本年度は、先行研究など主要文献の収集とその問題点の析出を行なった。こうした基礎作業に予想外の労力を取られたが、各研究分担者の研究と討議の結果、各国ともそれぞれ異なる固有の歴史的要件を持ちながらも、とりわけ19世紀後半から帝国主義時代に向かって、きわめて「人工的」な国家形成が進行していく様相が明かとなってきた。すなわち、それぞれの国民国家では、他国に対するいわば防御的な国境の確定、国家ないしそれを指導する政治エリートからのナショナリズムの標榜といった能動的な働きかけ等によって、程度の差こそあれ国民が国民国家という枠組みに統合・編成されていく過程が展開する。しかし、各国が単線的に発展するわけでは決してなく、その内部にはさまざまな差異や矛盾が包摂されており、上からのさまざまな抑圧をうけながら各地で広範なサブカルチャーとしての地域主義の台頭や発展が多数みられることも確認された。さらに、こうした内部矛盾を国家創設段階から極端に抱えこんでいる東ヨーロッパ諸国については、チェコスロヴァキアの分離・旧ユーゴ内戦など現在をも視野に入れた検討を行なう必要があろう。そして、近代化推進のためのモデルとして「一にして不可分」の国民国家という編成原理に変わるものはなにかについても展望する視野の広がりが必要であろう。こうした問題関心を踏まえて各研究分担者は、それぞれ担当分野のケーススタディを進めつつあり、順次専門雑誌等に発表する予定である。
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