1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05303015
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
植田 洋匡 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70026186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 光正 広島大学, 工学部, 教授 (70124336)
小森 悟 九州大学, 工学部, 助教授 (60127082)
北田 敏廣 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (40093231)
迫田 章義 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (30170658)
鈴木 基之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (10011040)
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Keywords | 地球温暖化 / 物質循環モデル / 炭素循環 / 温室効果気体 / 対流圏オゾン / オーシャンフラックス / 酸性雨 / 地球環境問題 |
Research Abstract |
目的:地球規模大気環境問題において、人間活動がどの程度濃度増加をもたらしているのか、排出削減によりどの程度濃度増加が抑制されるのかは不明であり、研究の最も進んでだ二酸化炭素についてでも、物質収支さえ明らかになっていない(ミッシングシンク問題)。 本研究は工学的な手法を駆使して地球規模物質循環モデルを構築することを目的とする。まず、地球生態系を構築する大気、海洋、陸上生態系の3つの系について、それぞれの系内の変動を支配する過程を物質に着目してモデリングし、各系の物質循環モデル(要素モデル)を構築する。つぎに、大気、海洋、陸上生態系間の相互作用をモデル化して、これらの要素モデルを統合した「地球生態系総合モデル(マスターモデル)」を構築する。 経過及び成果:本年度は、大気、海洋、陸上生態系の各系についての物質循環モデル(要素モデル)の構築を目標に以下の研究を実施した。 1.大気中の物質循環モデル:これまで酸性雨、酸性雪を含む大気汚染の輸送・拡散・反応・沈着モデルを開発してきた。これは、科学的過程として100種以上の化学種について気相、液相、固相、表面反応など150個以上の素反応を含み、物理化学過程として気相-hydrometeor(雲粒、氷晶、霰、雹、雨、雪)間の物質移動、粒子化を含むものである。本研究では、一酸化炭素、メタンの酸化分解反応などグローバルスケールで重要な低速反応を付加し、球面座標系に変えたマスターモデル(化学物質に関する地球規模物質循環モデル)を完成させた。これを用いて、3-5月の黄砂飛来時を対象にシミュレーションを行い、人為起源物質の光化学反応が東アジアでの対流圏オゾン・サルフェート・ナイトレートの高濃度の原因であることを示した。また、自然起源物質(成層圏からの降下オゾンや黄砂、火山性物質、植物起源物質)と人為起源汚染物質との相互作用をうけた、東アジア対流圏大気質の特性の検討に着手した。 2.陸上生態系の物質循環モデル:炭素循環モデルの構築を行った。これは、葉、幹、不埴土の3つのコンパートメントの炭素収支を記述するモデルである。このモデルを用いて、全球的な植生分布(熱帯雨林、草原などの面積と炭素蓄積量)の現況の再現と将来予測に成功した。これを基に、大気中の炭酸ガス濃度が2倍になるまでの非定常過程において、植生の分布がどう変動していくかの検討に着手した。 3.海洋中の物質循環モデル:海洋大循環中の物質の移動と生物活動を含めたモデリングを現在実施中で未完成である。大気・海洋間の物質交換については新しいモデルを完成させた。即ち、海上風によって誘起される乱流および浮力乱流のそれぞれについて、物質変換係数を実験および理論から決定し、将来の予測式が炭酸ガスのオーシャンフラックスの著しい過小評価を招くことを示した。
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[Publications] H.Ueda: "A numerical study of nocturnalsea breezes:Prefrontal gravity waves in the copensating flow and inland penentration of the sea-breeze cutoff vortex." Journal of Atomos.Sci.50,8. 1076-1088 (1993)
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[Publications] M.Suzuki: "Simplified Dynamic Modeling on Carbon Exchange between Atmosphere and Terrestrial Ecosystems" Ecological Modeling. 70. 161-194 (1993)
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[Publications] T.Kitada: "Nitric oxide and ozone in the free troposphere over the western Pacific ocean" Journal Geophysical Research. 98,11. 20,527-20,535 (1993)
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[Publications] S.Komori: "Turbulence Structure and Mass Transfer Across a Sheared Air-WaterInterface in Wind-Driven Turbulence" Journal of Fluids Mechanics. 249. 161-183 (1993)
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[Publications] 岡田光正: "野川流域における石油系炭化水素の雨天時流出" 水質汚濁研究. 16. 251-260 (1993)
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[Publications] H.Ueda: "Observed structure of the nocturnal urban boundary layer and its evolution into a convective mixed layer21GC06:Atomospheric Environment" 26B. 45-57 (1992)
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[Publications] 植田洋匡: "酸性雨と越境大気汚染(「地球大気環境問題とその対策-アジアからの視点-」)" オーム社、大気汚染協会編, 11 (1993)
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[Publications] 植田洋匡: "酸性雨(「時世代技術と熱--地球環境、エレクトロニクス、生体エネルギー-」)" 技法堂出版、日本機械学会編, 9 (1993)