1995 Fiscal Year Annual Research Report
コンクリート内部における物質の移動と構造物の劣化メカニズム
Project/Area Number |
05402044
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Research Institution | TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
長滝 重義 東京工業大学, 工学部・土木工学科, 教授 (00016320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久田 真 東京工業大学, 工学部・土木工学科, 助手 (80238295)
鎌田 敏郎 東京工業大学, 工学部・土木工学科, 助手 (10224651)
大即 信明 東京工業大学, 工学部・開発システム工学科, 教授 (40211106)
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Keywords | イオンの移動 / 拡散 / 内部組織 / 骨材ペースト界面 |
Research Abstract |
本研究題目に関する本年度の研究実績を以下にまとめる。 (1)コンクリートの内部組織構造が通電によるイオンの泳動に及ぼす影響 コンクリート中における物質移動現象は、硬化体の内部組織構造と密接な関係があるとされている。したがって、本研究では、通電によるイオンの泳動と、コンクリートの内部組織構造との関連性についての検討を行った。実験に際しては、電場におけるイオンの移動に関する一般的な指標である移動度ならびに輪率を用い、セメントの種類を一定とし、セメントペースト、モルタルおよびコンクリートの各ケースについて比較検討を行った。 その結果、硬化体中のイオンの電気泳動には、骨材-ペースト界面が大きく影響を及ぼしており、特に細骨材(砂)とペーストの界面はイオンの移動を促進させ、粗骨材(砂利)とペーストの界面は逆にイオンの移動を制御する傾向があることが分かった。 (2)通電によるイオンの泳動と拡散との関係に関する検討 一般的に、実際のコンクリート構造物においては、Cl^-などの有害イオンがコンクリート内部へ進入する場合には、着目イオンのコンクリート内外における濃度差による拡散で説明されている。本研究では、このような濃度勾配による拡散現象と、電場による泳動現象との関連性について、理論的な面も含めて検討を行った。 その結果、結合材の種類が同一であり、かつ定常状態で移動が行なわれているとすれば、拡散と泳動の両現象には相関関係が得られることが分かった。しかしながら、結合材の種類が異なる場合には、必ずしも相関関係が得られるわけではなく、拡散と泳動の各現象を律速する細孔の径の範囲も異なることが分かった。 (3)コンクリートの劣化とイオンの泳動との関係に関する検討 コンクリートの材料的性質は、使用する材料や配合のほか、中性アルカリ骨材反応によっても大きく変化するため、本研究では、これらの劣化のうち、特にコンクリートの中性化の程度とCl^-の泳動との関係についての検討を行った。 その結果、Cl^-は、中性化したセメント硬化体中において中性化していない硬化体中よりも移動し易いことが分かった。また、この傾向を更に詳細に検討した結果、セメント硬化体中におけるCl^-は、硬化体内部の細孔溶液中のイオン量が多い場合には移動し難くなることが分かった。
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[Publications] 網野貴彦,大即信明,長滝重義,久田真,佐瀬正光: "通電によるモルタル内のアルカリイオンの移動とアルカリ骨材反応抑制に関する研究" 土木学会第50回年次学術講演会講演概要集. 5. 230-231 (1995)
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[Publications] 藤倉修一,長滝重義,大即信明,久田真,番場孝二: "モルタル中におけるイオンの電気泳動に及ぼす材齢および厚さの影響" 土木学会第50回年次学術講演会講演概要集. 5. 330-331 (1995)
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[Publications] 大即信明,長滝重義,久田真,網野貴彦: "鉄筋コンクリート部材の脱塩・再アルカリ化工法に関する基礎的研究" 土木学会論文集. V-28. 67-76 (1995)
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[Publications] 長滝重義,大即信明,久田真,遠藤平: "コンクリート中のイオンの通電泳動に関する研究" 土木学会論文集. V-28. 77-86 (1995)
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[Publications] Mobuaki OTSUKI, Shigeyoshi NAGATAKI, Makoto HISADA: "Movement of lons through Mortar Mixed with Mineral Admixtures" 5th CANMET/ACI International Conference on Fly Ash, Silica Fume, Slag and Natural Pozzolons in Concrete. SP-153. 297-313 (1995)