1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05403029
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中前 勝彦 神戸大学, 工学部, 教授 (40031075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西野 孝 神戸大学, 工学部, 助手 (40180624)
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Keywords | 高分子 / 結晶弾性率 / 力学物性 / X線回折 / 温度依存性 / 低温 / 結晶構造 / 分子鎖間相互作用 |
Research Abstract |
本研究は,極低温から高温に至るまで広い温度範囲で結晶弾性率を測定し,分子鎖の骨格構造と変形機構そして結晶内分子鎖の運動性に関して知見を得ることを目的とした。低温域での結晶弾性率,試料弾性率を測定する目的でまず,液体窒素温度までの低温で測定可能なセルを試作した。このセルを本年度申請備品である回転対陰極型のX線発生装置上に設置し,X線回折を行ったところ,従来の既存装置では回折強度が微弱で測定不能であった試料に対しても短時間で良質の回析線が得られた。そこで,試料としてまずポリエチレンを取り上げて測定を開始した。その結果,分子鎖軸方向の結晶弾性率は常温と変化なく,低温領域においても一定であることを見出した。このことは鎖軸方向に関して分子鎖の変形機構が低温でも変化せず,運動性も抑制されていることを意味している。また,応力均等の仮定が成立していることも証明できた。一方,分子鎖軸に対して直角方向の結晶弾性率は低温で大きく増加することを見出した。若干例を挙げれば,ポリエチレンで約2倍,ポリビニルアルコールでは絶対値として約15GPaと分子鎖間相互作用に基づくものとしては極めて大きな値となり,鎖軸方向とは異なり,高分子における分子鎖間相互作用の非調和性の大きさを力学物性の観点から明らかにすることができた。さらに,試料物性に関しても同様に広い温度範囲で応力-ひずみ曲線を集積しており,大変形下での試料および結晶の挙動について比較検討を進めている。このように本実験の目的は現在着実に達成されつつあり,今後液体ヘリウム温度への測定の拡張を図り,弾性率の温度・周波数分散を含めマクロな試料物性としての力学分散と結晶内分子鎖の運動性との対応を検討してゆく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Katsuhiko Nakamae: "Elastic Modulus of the Crystalline Regions of Poly(ethylene-2,6-naphthalate)" Polymer. 34. 3322-3324 (1993)
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[Publications] Katsuhiko Nakamae: "Temperature Dependence of the Elastic Modulus of the Crystalline Regions of Poly(ethylene-2,6-naphthalate)" Polymer. (発表予定).
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[Publications] Takashi Nishino: "Elastic Modulus of the Crystalline Regions of Cellulose Triesters" Journal of Polymer Science. (発表予定).