1993 Fiscal Year Annual Research Report
赤血球造血因子の多面的生理作用と生合成の制御に関する研究
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05403030
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 隆造 京都大学, 農学部, 教授 (60077378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永尾 雅哉 京都大学, 農学部, 助手 (10237498)
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Keywords | エリスロポエチン / エリスロポエチン受容体 / 神経系 / 酸素分圧 / アストロサイト / ニューロン |
Research Abstract |
エリスロポエチン(EPO)は赤血球系の前駆細胞に特異的に作用し、その増殖・分化を促進すると考えられてきたが、神経系にも作用することを発見した。コリン作動性ニューロン株SN6や副腎髄質細胞由来のクロム親和性細胞PCl2上のEPO受容体が存在することを標識EPOとの結合実験で明らかにした。またPCl2細胞にEPOを添加すると神経突起の伸展や増殖の促進は見られないが、一過的な細胞内カルシウム濃度の上昇やモノアミン含量の増加が見られた。このことはEPOが神経系で栄養因子的作用を持つことを示唆している。またマウスの胎児の神経系形成においてEPOおよびEPO受容体が神経上皮など神経系に分化していく部位に存在することを免疫組織化学的手法で明らかにした。 次にEPOが成体の脳で作用する可能性について検討した。EPOは成体では腎臓で造られるが、血液脳関門を越えて脳に作用することは考えられず、脳内で産生される必要がある。そこで胎生18日目ラット脳細胞の初代培養を行ったところ、抗グリア繊維性酸性タンパク質抗体に対して陽性反応を示す細胞(アストロサイト)がEPOを産生することを発見した。また腎臓と同様に酸素分圧を通常の21%から5%、さらに1%に低下させることによりEPO産生の上昇が見られた。このことから脳虚血など酸素供給の低下による脳の損傷に対してEPOが作用する可能性も考えられる。また神経系細胞では赤芽球系細胞と比べてEPOに対する親和性が10倍から100倍ほど低かったが、先程述べたように神経系ではEPOはアストロサイトで生産され、ニューロンにパラクリン様式で作用するという結果を得たので、局所的な高濃度EPOの存在が期待され、親和性の低さは克服されると考えられた。EPOの神経系での作用の詳細と機作について引き続き検討している。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Seiji Masuda: "Functional erythropoietin receptor of the cells with neural characteristics:Comparison with receptor properties of erythroid cells." J.Biol.Chem.268. 11208-11216 (1993)
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[Publications] Masaya Nagao: "Effect of tunicamycin treatment on ligand binding to the erythropoietin receptor:Conversion from two classes of binding sites to a single class." Blood. 81. 2503-2510 (1993)
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[Publications] Yoshiko Yasuda: "Localization of erythropoietin and erythropoietin-receptor in postimplantation mouse embryo." Dev.Growth.Differ.35. 711-722 (1993)
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[Publications] Masaki Okano: "Characterization of erythropoietin isolated from rat serum:Biochemical comparison of rat and human erythropoietin." Biosc.Biotech.Biochem.57. 1882-1885 (1993)
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[Publications] 佐々木 隆造: "赤血球造血因子とその可溶型受容体の生産" 化学と生物. 31. 275-280 (1993)
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[Publications] 永尾 雅哉: "神経系におけるサイトカインの作用" Molecular Medicine. 31. 106-107 (1994)
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[Publications] 永尾 雅哉: "廣川タンパク質化学 第2巻 受容体タンパク質I" 廣川書店, 230 (1993)
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[Publications] 佐々木 隆造: "廣川タンパク質化学 第8巻 成長因子II" 廣川書店, 281 (1993)