1996 Fiscal Year Annual Research Report
赤血球造血因子の多面的生理作用と生合成の制御に関する研究
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05403030
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐々木 隆造 京都大学, 農学部, 教授 (60077378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永尾 雅哉 京都大学, 農学部, 助手 (10237498)
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Keywords | エリスロポエチン / エリスロポエチン受容体 / アストログリア / 神経細胞 / 神経栄養因子 / 子宮組織 / エストラジオール / 子宮毛細血管 |
Research Abstract |
エリスロポエチン(EPO)は赤血球前駆細胞に作用し、その分化と増殖を促進する糖蛋白質であり、腎臓で生産される。EPOは赤血球造血にのみ生理的意義があると考えられて来たが、我々は、EPOが中枢神経系及び子宮組織毛細血管系に重要な生理作用を持つことを証明した。以下に本年度の成果を列挙する。 (1)虚血処理したスナネズミの脳内にEPOをミニポンプで連続的に投与すると、海馬における遅発性神経細胞死が著しく抑制された。また、虚血による記憶・学習力の低下も防止する。更に、EPOと結合しうる可溶型受容体を脳内に投与したところ、虚血による神経細胞死が促進され、通常ではなんら障害をきたさない短時間の虚血でも記憶・学習能力の低下を引き起こすことを発見した。このことは、EPOが常に生理的神経栄養因子として作用していることを示している。 (2)子宮組織は性周期に応じて退行と再生を繰り返し、再生期には活発な血管新生を伴う。EPOはこの血管再生を促進することを発見した。他方、EPOと結合する受容体細胞外領域を子宮腔内に投与すると、血管再生が強く阻害され、EPOが子宮組織内の血管形成に必須であることを示す。 (3)子宮組織の再生は、ステロイドホルモンであるエストラジオールの支配下にある。エストラジオールは卵巣で合成される。卵巣摘出したマウスにエストラジオールを投与すると、非常に早い時期(1時間以内)にEPOmRNAが検出され、4時間後にピークになり、その後低下する。 (4)免疫抗体染色により、EPO受容体は毛細血管内皮細胞に発現していることを証明した。以上の結果は、EPOは子宮組織内で生合成され、エストラジオールがその生合成を制御していること、EPOは子宮内毛細血管の形成に重要であることを示している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] E.Morishita: "Anti-erythropoietin receptor monoclonal antibody : Epitope mapping,quantification of the soluble receptor,and detection of the solubilized transmembrane receptor and the receptor and receptor expressing cells." Blood. 88. 465-471 (1996)
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[Publications] Y.Yasuda: "Erythropoietin is increased in avascular yolk sacs induced by retinoic acid mice." Der.Dynamics. 207. 184-194 (1996)
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[Publications] E.Morishita: "Erythropoietin receptor is expressed in rat hippocampal and cerebral cortical neurons,and erythropoietin prevents in vitro glutamate-induced neuronal death." Neurosci.76. 105-116 (1997)
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[Publications] S.Masuda: "Insulin-like growth factors and insulin stimulate erythropoietin production in primary cultured astrocytes." Brain Res.746. 63-70 (1997)
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[Publications] M.Nagao: "Secretory production of erythropoietin and the extracellular domain of erythropoietin receptor by Bacillus brevis : Affinity purification and characterization." Biosci.Biotech.Biochem.(印刷中). (1997)
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[Publications] 永尾雅哉: "蛋白質核酸酵素" 酸素による遺伝子発現の制御, 10 (1996)