1993 Fiscal Year Annual Research Report
小口径血管移植時の閉塞機序とその対策に関する研究-遠隔成績向上を目的として-
Project/Area Number |
05404043
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三島 好雄 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (00010158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北郷 邦昭 東京医科歯科大学, 医学部, 助手
仁瓶 善郎 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (00189341)
伊藤 雅史 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (30223184)
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Keywords | 小口径人工血管移植 / 血管内皮細胞 / 吻合部内膜肥厚 / 血管平滑筋細胞 / 遠隔開存 |
Research Abstract |
平成5年度ではまず小口径人工血管移植時の閉塞モデル作成を企図した。家兎(New Zealand White Rabbit雄)を用い、移植操作2週間前に血管内皮細胞を剥離損傷することにより晩期閉塞の病態の主座と考えられている筋性内膜肥厚をあらかじめ宿主側血管に作成し、その後、内径3mm、長さ1.5cm、線維長30μのテクノ型ePTFEグラフトを移植し、コントロール群(剥離損傷操作非施行)との間で吻合部内膜肥厚形態の相違について比較検討した。結果は我々の予想に反し対照群の吻合部に有意な肥厚は認められなかった。むしろ吻合部では内皮剥離損傷操作のみの影響によると思われる宿主側遠位部に比べ肥厚程度は軽度の傾向にあり、ePTFEグラフト上への平滑筋細胞群の伸展も殆ど認められず、吻合部に近づくにつれ徐々に薄くなった宿主血管上の筋性肥厚内膜が吻合部を境に途絶したような形態を示した。一方コントロール群では当然操作の加わらない遠位部では殆ど内膜肥厚は呈さず、一部に吻合部に局在した些少の反応性内膜肥厚を認めたが、この部をHHF35(抗平滑筋アクチンモノクローナル抗体)染色で観察すると肥厚部内膜の細胞は非染色体で平滑筋細胞成分の増殖によるとの判断を積極的に示唆する所見は認められなかった。これらの結果に対し以下の考察を加えた。すなわち、損傷操作2週後の吻合ではすでに血管内腔は再内皮化されている可能性があり、その状態で吻合操作による内皮損傷が些少であると仮定すると再生内皮が諸々のchemical factor(平滑筋細胞遊送増殖促進因子)の内皮下への透過のbarrierとなり内膜での平滑筋細胞の遊走を促し得ず、またたとえ平滑筋細胞が遊走したとしても上記因子の持続的影響の少ない元では剥離損傷操作2週後の平滑筋細胞の活性レベルはほぼPlateauで、増殖分化度はむしろ低下傾向にある可能性もある。そこで我々は再内皮化する前の移植群(損傷操作施行直後に移植を行う群)を加え現在検討中である。
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