1993 Fiscal Year Annual Research Report
低温乳酸リンゲル液灌流による選択的脳冷却の実験的研究
Project/Area Number |
05404051
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
太田 富雄 大阪医科大学, 医学部, 教授 (80025650)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 一朗 大阪医科大学, 医学部, 助手 (40247862)
三宅 裕治 大阪医科大学, 医学部, 講師 (50181996)
長沢 史朗 大阪医科大学, 医学部, 助教授 (10144370)
|
Keywords | 低温乳酸リンゲル液 / 選択的脳冷却 |
Research Abstract |
ビーグル犬12頭を全麻調節呼吸下に、頸部で両側頸動脈、左椎骨動脈、右頸静脈の血流遮断を行い、右椎骨動脈より5℃の乳酸リンゲル液を注入し、同時に左頸静脈より希釈冷却された静脈血を脱血した。脱血した静脈血は、血液限外濾過装置を用いて除水し、加温器で復温したのち、大腿静脈より返血した。全身のヘパリン化は血管撮影時と同量の100IU/kgである。冷却時間は、血流遮断より60分間とした。 脳温は、冷却開始後5.4±2.7分で28℃、15.5±9.4分で20℃に低下した。最低脳温は17.0±1.8℃まで低下したが、最低直腸温は32.1±2.2℃に維持された。冷却中、不整脈は認められず、冷却前の動脈血圧は127±16mmHgであったが、冷却中は95±21mmHgに低下した。冷却液総量は3455±695mlであったが、除水量と尿量との合計は3332±658mlであり、中心静脈圧は、冷却前の3.2±1.7mmHgから、冷却中は7.5±4.4mmHgに上昇したにとどまり、循環血液量増大による心肺合併症、電解質異常も認めなかった。また、術後10週間の観察で、全例に神経学的異常を認めず、摘出脳のTTC染色においても、明らかな梗塞巣を認めなかった。 我々の行っている脳保護のための分離脳冷却法は、短時間で冷却が可能であり、神経学的所見や、組織学的検討から、安全性が高いことはすでに報告した(NEUROSURGERY,31(6);1049-1055,1992)。しかし臨床応用を考えて、今回我々は、冷却希釈された頸静脈血を回収してCVVH(continuous veno-venous hemofiltration)で除水を行い、加温したうえで大腿静脈より返血するシステムを追加した。これにより、灌流液量に見合った除水が可能となり、循環血液量の増大を予防できるので、利尿剤投与や電解質補正も不必要となった。また、すでに報告した分離脳冷却法よりも脳温を下げることが可能となった。今後は、現在の方法を用いて、分離脳冷却における至適温度の検索、より安全な冷却溶媒の検討を行っていく予定である。
|