1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05404078
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 正夫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (20013857)
|
Keywords | 放射線応答 / 低線量放射線 / 適応応答 / シグナル伝達 / 遺伝子発現 / Cキナーゼ / マウス培養細胞 / 染色体導入 |
Research Abstract |
マウス培養細胞に低線量のX線および核分裂中性子を照射する方法で放射線に対する細胞応答の機構を調べ、以下のことが明らかとなった。細胞に低線量の放射線を前照射した細胞はその後の高線量の放射線に対して突然変異抵抗性となる。この適応応答は10cGy以下の線量で有効であり、細胞は10cGy以下の放射線と10cGy以上の放射線を別の刺激として受けとめているばかりでなく、10cGy以上の放射線は既に誘導されている適応応答を短時間に消去する。即ち、線量に対応した情報伝達路に相互干渉があることを示す。細胞は低濃度の過酸化水素に対しても同様に応答するので放射線応答の原因刺激に酸化ラジカルが関係していることを示唆する。さらに、この適応応答は低濃度のTPAでも誘導されることからCキナーゼを介する情報伝達であることが考えられる。事実、Cキナーゼ阻害剤は低線量のX線による適応応答を阻害することも分かった。低線量のX線ではc-jun遺伝子の発現誘導が起こるが、この発現誘導は高線量のX線照射で打ち消される。高線量放射線照射では逆にc-fos遺伝子の発現誘導が見られるので、初期応答遺伝子の1つであるAP-1複合体が放射線応答の情報伝達に関係している可能性が出てきた。引き続き低線量および高線量の放射線照射で誘導される蛋白質をの違いを二次元電気泳動法で検討中である。また、低線量放射線の前照射は細胞に突然変異抵抗性や致死抵抗性を誘導するが、細胞のがん化はむしろ促進されることが明らかとなった。一方、低線量放射線に対して適応応答を示さないマウスの変異株にヒトの単一染色体を導入した結果、11番染色体を導入したときにだけX線に対する適応応答現象が回復することが分かった。このことからヒト11番染色体に適応応答を支配する遺伝子の存在が示唆され、その遺伝子と機能の追求も今後の課題である。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Ejima,Y.: "Use of microcell hybrids for analysis of the 11q23 region and improved lacalization of the A-T group A/C genes." NATO ASI Series. 77. 75-85 (1993)
-
[Publications] Kato,M.: "Loss of heterozygosity on chromosome 13 and its association with delayed growth of retinoblastoma." International Journal of Cancer. 54. 922-926 (1993)
-
[Publications] 佐々木正夫: "低線量放射線に対する細胞の適応応答" 医学のあゆみ. 166. 208 (1993)
-
[Publications] Matsubara,S.: "The effect of X-ray energy and an iodine-based contrast agent on chromosome aberrations." Radiation Research. 137. 231-237 (1994)
-
[Publications] Kato,M.V.: "Mutations in the retinoblastoma gene and their expression in somatic and tumor cells of patients with hereditary retinoblastoma." Human Mutation. 3. 44-51 (1994)
-
[Publications] Shimizu,T.: "Detection of mutations of the RB1 gene in retinoblastoma patients by using exon-by-exon PCR-SSCP analysis." Amercan Journal of Human Genetics. (in press). (1994)