1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05404078
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 正夫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (20013857)
|
Keywords | 放射線応答 / 低線量放射線 / 細胞内情報伝達 / Cキナーゼ / JNKキナーゼ / 即発応答遺伝子 / OHラジカル / 増殖刺激 |
Research Abstract |
哺乳動物の細胞は放射線に対して鋭敏に応答し、多様な生理活性を発現する。本研究は、この放射線応答の分子機構を機構を明らかにする目的で平成5年度から出発した。昨年度の研究から、この放射線応答にはCキナーゼを介した情報伝達系が関与し、応答の結果、細胞は致死効果、染色体異常の形成、突然変異の生成に対して耐性を示すようになり、また癌化に関してはより感受性となることが明らかとなった。本年度は、この放射線応答の分子機構に重点を置いて研究を進め、次のことが明らかとなった。(1)刺激分子種はOHラジカルであり、細胞は他の過酸化ラジカルと区別して認識し、情報伝達を行う。(2)シグナルはCキナーゼ(PKC)に伝達されるが、TPAの場合と異なった分子種、おそらくnPKCに伝えられ、即発応答遺伝子であるc-jun遺伝子の発現を高める。(3)紫外線がJNKキナーゼによってJUN蛋白を活性化するのに対してX線はJNKキナーゼを活性化せず、細胞は紫外線とX線を異なった刺激として応答している。(4)TPA刺激がMAPKキナーゼを活性化するのに対してX線はMAPKキナーゼを活性化しない。また、TPA長期処理ではPKC活性が抑制されるが、X線にはこのダウンレギュレーションが起こらない。即ち、別種のOKCが関与していることを示す。(5)低線量放射線照射を受けた接触阻止状態にある細胞は一過性にDNA合成をし、細胞数が増えるが、再び元の細胞数に復帰する。このことは、増殖刺激シグナルと細胞死シグナルのスイッチが行われることを示唆している。以上、本年度の研究から、これまで未知であった放射線に対する細胞応答に関し、放射線特有の情報伝達路が存在することを明らかにすることができた。
|
-
[Publications] Shimizu,T.et al.: "Detection of mutations of the RB1 gene in retinoblastoma patients by using exon-by-exon PCR-SSCP analysis." American Journal of Human Genetics. 54. 793-800 (1994)
-
[Publications] Sasaki,M.S.: "Dissociation between radioresistant DNA replication and chromosomal radiosensitivity in ataxia telangiectasia." Mutation Research. 307. 107-113 (1994)
-
[Publications] Kato,M.V.et al.: "Parental origin of germ-line and somatic mutations in the retinoblastoma gene." Human Genetics. 94. 31-38 (1994)
-
[Publications] Kato,M.V.et al.: "Mutations in the retinoblastoma gene and their expression in somatic cells of patients with hereditary retinoblastoma." Human Mutation. 3. 44-51 (1994)
-
[Publications] Saijo,M.et al.: "Inactivation of oncoprotein binding by a single Cys^<706>-to-Tyr substitution in the retinoblastoma protein." FEBS Letters. 340. 181-184 (1994)
-
[Publications] Matsubara,S.et al.: "The effects of X-ray energy and an iodine-based contrast agent on chromosome aberration." Radiation Research. 137. 231-237 (1994)