1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05451013
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Research Institution | OTEMAE COLLEGE |
Principal Investigator |
武田 恒夫 大手前女子大学, 文学部, 教授 (00000357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冷泉 爲人 大手前女子大学, 文学部, 教授 (70122215)
木下 政雄 大手前女子大学, 文学部, 教授 (10000358)
切畑 健 大手前女子大学, 文学部, 教授 (80000363)
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Keywords | 粉本の研究 |
Research Abstract |
粉本の資料的価値を通じ、その概念を規定するのが本研究の目的である。絵画の場合、広義の解釈をとることによって、従来指摘されてきたように、二通りの効用を認めることができる。その一つは用筆の教本としての性格をもつことであり、次に、後日の制作にそなえた資料として、図様の調整に種々のモチーフを提供する効用をもつ。さらに、当研究では、既に失われて実態不明となっている原画の大要を把握するため、模本が欠落の部分を補足しうる一助となることに着目した。 染織関係では、粉本的な性格の例として、雛型本が指摘される。小袖などの意匠を縮小したかたちで、白描の木版にまとめたものである。染織品は脆弱で、近世の諸例は殆ど失われているため、その欠落を補う効用が大きい。これとは別に、神宝裂(新宮裂)と呼ばれる染織品について、その調進は何百年も経過した便化の所産であって、これを素材として、粉本がどのように受容されるかについても考察を試みた。 書跡では、多数伝存してきた写本類に着眼、その字すがた(書体、書風)と、書のかたち(品質、形状)を重視した。その結果、写書の諸相をそれぞれの特色から、各書体に区分、また、書芸、調度、読書など当初の制作目的をふまえて、それぞれの問題点を考察した。 以上、絵画、染織、書跡の諸分野にわたる近世の粉本資料にしぼり、美術史研究の一端として、むしろ作家や書家にとっての粉本とは別の観点から、その効用に着目した。図様の概要を模本や縮図、手本、雛型、写書などによって、各研究分野での関連資料の収集につとめるとともに、既に喪失した原本の欠落を補足検討することに努め、広義の粉本の性格づけやその価値について考察をすすめた点にある。しかし、潜在する粉本の量は膨大であって、本研究は、成果の一部紹介をかねて、今後の粉本研究への問題提起をはかるところに、その主旨がある。
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Research Products
(15 results)
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[Publications] 武田 恒夫: "京都近世の肖像画 序文" 京都市文化財ブックス. 11. 2-3 (1996)
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[Publications] 武田 恒夫: "集団活動とその背景" 「桃山の春・光悦展」目録. 158-162 (1995)
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[Publications] 武田 恒夫: "月次絵とその系譜" 「月次絵展」目録. 7-15 (1995)
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[Publications] 武田 恒夫: "朝鮮国王への贈呈屏風" 「朝鮮通信使」(明石書店). 297-319 (1995)
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[Publications] 武田 恒夫: "屏風における季節表現の展開" 国際美術史学会東京会議報告(中央公論美術出版). 341-358 (1995)
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[Publications] 冷泉 爲人: "在中の絵画-「粉本備進扣をめぐって-」" 京都画壇の十九世紀(2)文化文政期(思文閣). 153-159 (1995)
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[Publications] 冷泉 爲人: "関雪と播州-新出の瀑布図をめぐって" 日本美術工芸. 677. 9-16 (1995)
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[Publications] 冷泉 爲人: "応挙の写生画-「しかけ」表現をめぐって-" 京都国立博物館「円山応挙」展. 15-24 (1995)
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[Publications] 冷泉 爲人: "原派の絵画-粉本借進扣をめぐって-" 賀茂文化研究. 4. 59-117 (1995)
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[Publications] 切畑 健: "革新の美-桃山時代の染織-" 同門. 290-300. 各12-15 (1995、1996)
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[Publications] 切畑 健: "染色紀行・「伝統」と「創造」のいとなみ" 染-息づく色とデザイン-(監修). 15. 15-48 (1995)
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[Publications] 切畑 健: "織の故郷をたずねて" 織-華麗なる手技の世界-(監修). 16. 7-51 (1996)
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[Publications] 切畑 健: "甦る能装束" 織-華麗なる手技の世界-. 16. 64-71 (1996)
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[Publications] 切畑 健: "飛香館清賞 黒川古文化研究所蔵品目録3 染織I" (財)黒川古文化研究所, 200 (1996)
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[Publications] 武田 恒夫: "狩野派絵画史" 吉川弘文館, 468 (1995)