1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05451079
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
安田 文吉 南山大学, 文学部, 教授 (80121474)
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Keywords | 富本 / 常磐津 / 清元 / 豊後節 / 歌舞伎 / 中村座 / 森田座 / 市村座 |
Research Abstract |
本年度は、3年計画の第2年度にあたる。本年は、前年度、その全てを収集調査し切れなかった東京地区の残りと、平戸市松浦史料博物館の調査を行なった。東京地区の残りは、東京大学教養学部黒木文庫・上野学園日本音楽資料室・国立音楽大学図書館(竹内道敬寄託文庫)・国立国会図書館・国立劇場・東京都立中央図書館(加賀文庫)・常磐津文字兵衛氏宅である。此所に所蔵されている富本節の正本・稽古本及び周辺資料(番付・評判記等)の調査を行い、可能なものは写真及び電子複写で資料を収集した。また、関係資料(常磐津・清元・豊後節等の正本・稽古本、及び江戸歌舞伎資料・狂言本等)を購入した。平戸松浦史料博物館については、史料博物館の目録が完備されておらず、先方に出向いても所蔵をなかなか確認し得ず、2度に渡って出かけざるをえなかったが、資料の管理という点で地方図書館・資料館の管理体制に問題を感じた。これで現在存在を確認し得た富本節の正本・稽古本の大半を収集したことになるが、富本節は、常磐津節や清元節に比べて、残存資料が非常に少ないことが判明した。また、残存資料は正本が多く、稽古本が少ない。これは、富本節の隆盛時期が比較的短かったことから、あまり地方へ流布しなかったこと、衰退してから久しいため散逸してしまったことによると思われる。さらに、富本の正本・稽古本には、文字譜のついているものが多い。一般的には、きちんとした文字譜が付いているのは、初期の頃のものに多い。これも富本節の隆盛時期が比較的短かったことを示していると思われる。
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