1994 Fiscal Year Annual Research Report
危機に立つ中山間地域の現状と展望(山形県西川町と朝日町の比較研究)
Project/Area Number |
05451108
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大川 健嗣 山形大学, 人文学部, 教授 (00006842)
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Keywords | 中山間地域 / 過疎集落 / 出稼ぎ / 高齢化 / 兼業農家 / 誘致企業 / 地域づくり / インフラストラクチャー |
Research Abstract |
本研究の目的は、中山間地域で起きている諸問題と平坦部農村が直面している今日の「農業危機」との構造論的関わり合いを、社会科学的に解明するところにある。 すでに平成5年度においては、山形県西川町の大井沢地区の根子集落並びに川土居地区の石畑集落、小山地区を個別訪問方式での農家実体調査を実施した。平成6年度においては、昭和59年9月に実施した山形県朝日町の2集落、林檎集落の沼向とかつての出稼ぎ集落たる西部地区の松程の2集落を、大川の定点追跡調査の手法で調査した。 調査は、沼向集落が40戸、松程集落が63戸、合計103戸の個別訪問方式の実体調査を、対象農家はもとより、朝日町当局の全面的な協力のもとに無事完了した。現在、調査表の分析を継続中である。 昭和59年の調査結果は、すでに『山形県高齢化社会研究所紀要』(第5巻第1号、昭和61年)に発表済みであるが、今回の調査では、およそ以下のような点で、前回時点との変化が認められる。すなわち、沼向集落の場合は、林檎(ふじが主力)産地として大市場たる東京中央卸売市場でも極めて高い評価を得ている、いわば林檎集落である。昭和59年時点での農家1戸当りの所得は601万円であった。これに対して、稲作単作地域でかつ、かつての出稼ぎ集落であった松程集落の場合は、377万円と前者のおよそ6割強に過ぎなかった。当時の両集落のこうした農家経済の違いは、農家の後継ぎ(嫁問題を含む)問題にもその明暗が現われていたが、今回の調査で衝撃を受けたことは、かなり安定的と思われていた林檎集落・沼向集落ですら、いわば戦線離脱組がかなり認められたという事実である。外国産りんごの輸入問題等が微妙に影響を与えているようである。そうした実相を、残る平成7年度で西川町との比較研究を通して結論を導きたいと考えている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 大川健嗣: "安定兼業の危機・崩れる農村地域社会" 「日本農業新聞」(1994年4月12日). (1994)
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[Publications] 大川健嗣: "これからの経営者像" 日本農業新聞(1994年8月16日). (1994)
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[Publications] 大川健嗣: "安定装置を失った農村" 日本農業新聞(1994年12月5日). (1994)
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[Publications] 大川健嗣: "戦後農業と東北" 「河北新報」(1994年9月27日). (1994)
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[Publications] 大川健嗣: "著者『出稼ぎの経済学』(紀伊国屋書店)" (注)1974年初版本の精選復刻版. (1994)
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[Publications] 大川健嗣: "地方自治体における政策立案の視点" アイビクト情報. 23. 22-31 (1993)