先進的林業地域における史的担い手の性格-吉野林業史の再検討-

1994 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 05451122
• Research Institution: University of Tsukuba
• Principal Investigator: 赤羽 武 筑波大学, 農林学系, 教授 (60015659)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 加藤 衛拡 筑波大学, 農林学系, 助手 (70177476) ; 砂坂 元幸 筑波大学, 農林学系, 講師 (80015669) ; 佐藤 常雄 筑波大学, 農林学系, 助教授 (70015907) ; 赤司 政雄 筑波大学, 農林学系, 教授 (30015648)
• Keywords: 吉野林業 / 材木商人 / 山林地主 / 樽丸 / 山守

Research Abstract

研究計画書では、本研究の特色について以下の2点を掲げた。すなわち、(1)山元の林業生産・流通の担い手の解明と、(2)吉野林業を取り巻く地域経済体系の解明とであった。
(1)に関する史料調査として、吉野町県立吉野高等学校林業博物館所蔵史料、宇陀郡榛原町(元川上村上谷在住)大谷家文書、川上村中奥丸家文書、同村東川桝家などを調査した。他に史料を数件発掘し、来年度の調査の依頼をした。(2)に関する史料調査では、山林地主家史料として中規模の経営である御所市潮田家文書を調査し、他に同様な中規模経営者の史料調査を依頼した。さらに、最大の山林経営を行う吉野町北村家との交渉を進めつつある。
調査を踏まえて、研究代表者を中心に研究会を数回開催し、研究の方向性を以下のように明らかにした。まず(1)については、昨年度の東吉野村船津家や本年度調査した川上村丸家に例を見るような、山元の大山林経営者の山林集積と山林経営の解明が重要である。これらの経営は、有力な山守を兼ねるものもある。(2)では、従来注目されたこなかったが御所市潮田家・奈良市潮田家のような中規模の不在山林地主経営がいくつかあり、これらは奈良盆地の地主層の理想とされる農地経営、山林経営ならびに有価証券の所有とを合せたいわゆる「三徳経営」を体現する経営であった。これを解明するため、今後も天理市足立家などの調査が必要となる。また、昨年度調査した兵庫県神戸市東灘区、西宮市の酒造地帯で大きな需要のあった樽材の製造・販売について、酒造家の樽購入史料からその実態を解明する必要があると考えたが、95年1月の震災で、史料調査は難しくなった。