1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05452048
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福山 寛 筑波大学, 物理学系, 助教授 (00181298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 将史 筑波大学, 物理学系, 助手 (90251032)
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Keywords | 低次元量子スピン系 / 量子固体 / 交換相互作用 / 超低温物理学 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
本研究の目的は、グラファイト上に物理吸着した数原子層以下のヘリウム3薄膜を核スピン間の交換相互作用(|J|〜2mK)に比べ充分低温まで冷却し、その2次元核磁性、特に基底状態近傍の性質を実験的に明かにすることである。今年度はこの実験を行うための核断熱消磁冷凍機を完成させ、すでに製作を終えている比熱・NMR同時測定用の試料セルを搭載して超低温度でのテスト冷却を行い、以下のことを明らかにした。 (A)熱スイッチを介して試料セルの温度240μKまで冷却できる。 (B)空の試料セルの熱容量はヘリウム3薄膜試料の期待される熱容量に比べて1/(10)程度と小さい。 (C)試料セルへの熱流入量は0.1nW以下と小さく、1mK以下で比較的熱緩和時間の長くなる白金NMR温度計を用いても充分な精度の比熱測定ができる。 (D)T=77Kにおいて窒素ガスの等温吸着曲線測定を行い、グラファイト基盤に対する整合固相が形成されるときの吸着量から試料セル内の表面積を正確に決定した。 上記の予備実験の結果は、我々が製作した実験装置が少なくとも240μKの温度までヘリウム3薄膜の比熱と、NMRを高い精度で測定できることを示しており、これは本研究の目的に照らして充分な性能である。装置開発に予定以上の時間を費やしたが、現在この装置を用いて、特異な反強磁性を示すと考えられているヘリウム3薄膜の吸着第2層について比熱とNMR測定を行っているところである。 一方、吸着基盤であるグラフォイル(剥離性グラファイトフィルム)の表面構造を昨年度に引き続いて走査型トンネル顕微鏡を用いて観測し、グラファイト単結晶子の大きさ(〜60Å)と基底面の角度(〜10deg)の分布を詳細に測定した。また、将来的にヘリウム3薄膜の表面構造を観測するための超低温走査型トンネル顕微鏡の開発に着手し、層状物質(NbSe_2)をテスト試料とした液体ヘリウム温度での予備実験を行い、安定した原子画像を得ている。
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